
クリエイティブディレクター
京都発クリエイティブエージェンシーearthcampus×JOOiが見据える地方企業を再生させるデザイン術とは?
投稿日:
2026/01/22
JOOiとearthcampusが協業を進めていくにあたって、もう一つ大きなテーマになっているのが「地方企業をどう支援していくか」です。
地方には、世界に一台しかない機械をつくっている会社や、大手ブランドに継続的に納品している技術企業が数多く存在します。にもかかわらず、ユーザーから見えるところには社名が出てこなかったり、Webサイトや発信の弱さから、事業機会や採用機会を逃してしまっているケースも少なくありません。
デザイン経営そのものの考え方や、感性・データ・AIのバランスについては、別の記事「真のデザイン経営とは?」で整理しています。
デザイン経営のURL
本記事では、その内容を踏まえたうえで、「地方企業をどう再生させていくか」という実務寄りの視点にフォーカスし、対談で出てきた具体的なアプローチをまとめていきます。
対談者紹介
佐藤 涼介

大学卒業後にビジネスコンサルティング会社を設立し、中小企業の経営・金融戦略・会計を支援。2017年に会社を売却し、クライアントに最適なクリエイティブを提供するearthcampus株式会社を設立。UXデザインを基盤にエンドユーザーの体験と「愛の循環」を重視したクリエイティブを手がけ、2022年からはJリーグクラブ「愛媛FC」のクリエイティブディレクターも務めている。
脇谷 光多

2019年にユナイテッド株式会社へ新卒入社し、複数プロダクトの新規営業を経験。その後、DXコンサルティング部門でインサイドセールスチームの立ち上げを担当。現在はユナイテッドグループの株式会社リベイスにて、審査制デザイナーマッチングサービス「JOOi」の事業統括を行っている。
地方企業が抱える発信の課題
「世界に一台の機械」が表に出てこない
脇谷:地方企業や地方のプロダクトの話になると、デザインに関わる方からよく「もったいない」という言葉を耳にします。
佐藤:地方に行くと、「世界に一台しかない機械を作っています」とか、「この前美容の〇〇にこれ納品しました」とか、本当にすごい技術やプロダクトを持っている会社がたくさんあります。
でも、間に代理店が入っていたりして、エンドユーザーからするとその会社の名前は一切出てこない。
表に出るブランド名は別の会社で、実際に価値をつくっている企業がどこなのかが見えない状態になっていることが多いです。
「良いものを作っていれば伝わる」はもう通用しない
脇谷:いわゆる「良いものを作っていれば、いつか誰かが見つけてくれる」という考え方に近い状態ですよね。
佐藤:そうですね。実際、それで何十年もやってこられた会社もありますし、老舗ほどその感覚が強いと思います。
ただ、今は「良いものを作る」がスタートラインでしかなくて、その先に「どう発信するか」「どう体験を設計するか」というレイヤーが乗ってきている。
そこに手を付けていないがゆえに、せっかくの技術や歴史が“存在しないこと”になってしまっているケースも少なくないと感じています。
データとユーザーの声から始める現状把握
最初の一歩は「Analyticsを入れて1ヶ月見る」
脇谷:そういう企業に対して、最初の一歩としてはどこから入ることが多いですか?
佐藤:いきなり大きなリブランディングをするというよりは、まず「現状をちゃんと見る」ところから始めることがほとんどですね。
具体的には、まずAnalyticsみたいな解析ツールを入れてもらう。
それも、導入して満足するのではなく、1ヶ月くらいはちゃんと数字を見るんです。
どのページから入ってきているのか
どこで離脱しているのか
直帰率が異常に高いページはどこか
こういうところを一緒に確認していきます。
口コミ・Googleレビューに出てくる「生の声」
佐藤:それに加えて、Googleレビューとか口コミも見に行きます。
ユーザーが何を褒めていて、何に対して不満を感じているのか。
「スタッフの対応が良かった」「トイレがちょっと…」みたいなことも含めて、生の声が出ているので、ここを整理するだけでもかなりヒントが見えてきます。
脇谷:数字だけじゃなくて、ちゃんと文章になった声も見に行くわけですね。
佐藤:はい。Analyticsと口コミ、この二つを見るだけでも、「今の体験のどこに問題がありそうか」がかなり浮かび上がってきます。
「現状診断パッケージ」としての支援イメージ
佐藤:こういう最初のセットアップを、単発の「現状診断パッケージ」みたいなイメージで提供できないか、という話もしましたよね。
一回10万円くらいのイメージで、
Analyticsの導入
基本的な指標の設定
1ヶ月分のデータのざっくりした読み解き
口コミ・レビューの整理
くらいまでをやって、「今どんなことが起きていそうか」を共有する。
そこから「何を優先的に改善するか」を一緒に決めていく、という入り方が、地方企業にはちょうど良いのかなと感じています。
マイナスを潰すことから始めるデザイン術
Webで起きているマイナスの典型パターン

脇谷:現状が見えてきたあと、どこから手を付けていくことが多いですか?
佐藤:基本的には、「マイナスが大きいところから潰していく」です。
Webで言えば、典型的なのはこんなパターンですね。
ページが重くて、開くのに時間がかかる
フォントサイズや行間のせいで、とにかく読みづらい
欲しい情報にたどり着くまでに、何階層も迷子になる
こういったところは、ユーザーが「なんかしんどいな」と感じて離脱しやすいポイントです。
店舗やリアルな場で起きているマイナス
佐藤:リアルなお店や施設だと、さっきのトイレの話がまさにそうで。
トイレが汚い、狭い、男女兼用で落ち着かない
席の間隔が狭すぎて、くつろげない
レジや受付の待ち時間が常にストレスになっている
こういうのって、わざわざ口コミに「トイレが〜」と書く人はそこまで多くないんですけど、確実に「次ここ選ぶかどうか」の判断には影響しているポイントなんですよね。
プラスより先に「ゼロに戻す」発想
佐藤:デザインというと、「何か新しいものを足す」「かっこいいものを上に乗せる」というイメージになりがちなんですけど、地方企業の再生で効くのはむしろ逆で。
まずは、体験を冷やしているマイナスをゼロに戻していくこと。
「ここがしんどい」「ここでストレスが溜まる」というポイントを一つひとつ潰していくことが、一番効くデザイン術だと思っています。
スタートアップ・中小企業のための実践ポイント
「細部のデザイン」にこだわる
脇谷:地方でも、新しく事業を始める会社や、スタートアップ的な動きをしている企業も増えてきていますよね。そういう会社には、どこからデザイン投資をしてほしいですか?
佐藤:僕は、スタートアップこそ「最初の一枚」にこだわった方がいいと思っています。
具体的には名刺ですね。
まだ実績もクライアントも少ないフェーズだからこそ、一枚の名刺にどれだけの熱量や美意識が込められているかが、そのまま企業の印象になる。
人数も少ないので、一人あたりの単価が多少高くなっても、トータルで見ればそこまで大きな金額にはならない。
だからこそ、ここはしっかり投資してほしいポイントだなと感じています。
プロダクトによっては、Webは「無理に高級に見せない」選択もあり
脇谷:一方で、Webサイトについてはどうですか?
佐藤:Webに関しては、「無理に高級に見せなくていい」というのが正直なところです。
フリー素材の写真をたくさん並べて、「それっぽい」サイトを作ろうとしがちなんですけど、それをやったところで、結局「この会社が何者なのか」はあまり伝わらない。
だったら、多少荒削りでも、代表やメンバーが日々の活動や考えをそのまま出しているSNSとかの方が、「人となり」や「温度感」は伝わりやすい場合も多いと思います。
情報を足すより、削っていく
佐藤:情報も同じで、「できること全部載せる」と、かえって何も伝わらなくなってしまう。
地方の企業やスタートアップほど、「本当に伝えたいことは何か」「どこを一番見てほしいのか」を絞っていくことが大事で、その意味では、「足すデザイン」より「削るデザイン」の方が、結果的にブランドとしてかっこよく見えることが多いと感じています。
earthcampus×JOOiが目指す地方支援のかたち
大手デザインファームが届かないゾーンを支える
脇谷:地方企業へのデザイン支援という話になると、大手のデザインファームもよく名前が挙がりますが、ああいうモデルだと届きにくい層もありますよね。
佐藤:そうですね。大手のデザインファームですとエンタープライズ向けの案件で、すごく価値のある仕事をされていますけど、中小企業や地方企業からすると、金額やプロジェクト規模の面で現実的ではないケースも多いと思います。
だからこそ、僕らはもう少し「小回りがきくモデル」でやりたいなと考えています。
小さなチームで「伴走」する
佐藤:イメージとしては、デザイン経営のハブとしてearthcampusが入りつつ、必要に応じてJOOiのデザイナーさんと小さなチームを組んでいくかたちです。
データとユーザーの声を集めて整理する人
どこにマイナスがあるかを見つけて、体験を設計し直す人
ビジュアルやコピーとして形にする人
こういった役割を、プロジェクトごとに必要な分だけ組み合わせていくイメージですね。
「地方から時代をつくる」土台づくりとしてのデザイン

佐藤:東京の大企業の案件ももちろん大事なんですけど、地方にいると、「ここにちゃんとデザインや発信が入れば、もっと世の中に知られていいのにな」と思う企業が本当に多いんです。
そういう会社が、自分たちの名前で価値を語れるようになること。
ユーザーにとってストレスの少ない体験を提供できるようになること。
そういった「土台づくり」としてのデザインを、地方から一緒にやっていきたいなと思っています。
JOOiとの協業でも、そういう企業さんとチームを組んでいけたら嬉しいですね。
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京都発クリエイティブエージェンシーearthcampus×JOOiが見据える地方企業を再生させるデザイン術とは?
投稿日:
2026/01/22
JOOiとearthcampusが協業を進めていくにあたって、もう一つ大きなテーマになっているのが「地方企業をどう支援していくか」です。
地方には、世界に一台しかない機械をつくっている会社や、大手ブランドに継続的に納品している技術企業が数多く存在します。にもかかわらず、ユーザーから見えるところには社名が出てこなかったり、Webサイトや発信の弱さから、事業機会や採用機会を逃してしまっているケースも少なくありません。
デザイン経営そのものの考え方や、感性・データ・AIのバランスについては、別の記事「真のデザイン経営とは?」で整理しています。
デザイン経営のURL
本記事では、その内容を踏まえたうえで、「地方企業をどう再生させていくか」という実務寄りの視点にフォーカスし、対談で出てきた具体的なアプローチをまとめていきます。
対談者紹介
佐藤 涼介

大学卒業後にビジネスコンサルティング会社を設立し、中小企業の経営・金融戦略・会計を支援。2017年に会社を売却し、クライアントに最適なクリエイティブを提供するearthcampus株式会社を設立。UXデザインを基盤にエンドユーザーの体験と「愛の循環」を重視したクリエイティブを手がけ、2022年からはJリーグクラブ「愛媛FC」のクリエイティブディレクターも務めている。
脇谷 光多

2019年にユナイテッド株式会社へ新卒入社し、複数プロダクトの新規営業を経験。その後、DXコンサルティング部門でインサイドセールスチームの立ち上げを担当。現在はユナイテッドグループの株式会社リベイスにて、審査制デザイナーマッチングサービス「JOOi」の事業統括を行っている。
地方企業が抱える発信の課題
「世界に一台の機械」が表に出てこない
脇谷:地方企業や地方のプロダクトの話になると、デザインに関わる方からよく「もったいない」という言葉を耳にします。
佐藤:地方に行くと、「世界に一台しかない機械を作っています」とか、「この前美容の〇〇にこれ納品しました」とか、本当にすごい技術やプロダクトを持っている会社がたくさんあります。
でも、間に代理店が入っていたりして、エンドユーザーからするとその会社の名前は一切出てこない。
表に出るブランド名は別の会社で、実際に価値をつくっている企業がどこなのかが見えない状態になっていることが多いです。
「良いものを作っていれば伝わる」はもう通用しない
脇谷:いわゆる「良いものを作っていれば、いつか誰かが見つけてくれる」という考え方に近い状態ですよね。
佐藤:そうですね。実際、それで何十年もやってこられた会社もありますし、老舗ほどその感覚が強いと思います。
ただ、今は「良いものを作る」がスタートラインでしかなくて、その先に「どう発信するか」「どう体験を設計するか」というレイヤーが乗ってきている。
そこに手を付けていないがゆえに、せっかくの技術や歴史が“存在しないこと”になってしまっているケースも少なくないと感じています。
データとユーザーの声から始める現状把握
最初の一歩は「Analyticsを入れて1ヶ月見る」
脇谷:そういう企業に対して、最初の一歩としてはどこから入ることが多いですか?
佐藤:いきなり大きなリブランディングをするというよりは、まず「現状をちゃんと見る」ところから始めることがほとんどですね。
具体的には、まずAnalyticsみたいな解析ツールを入れてもらう。
それも、導入して満足するのではなく、1ヶ月くらいはちゃんと数字を見るんです。
どのページから入ってきているのか
どこで離脱しているのか
直帰率が異常に高いページはどこか
こういうところを一緒に確認していきます。
口コミ・Googleレビューに出てくる「生の声」
佐藤:それに加えて、Googleレビューとか口コミも見に行きます。
ユーザーが何を褒めていて、何に対して不満を感じているのか。
「スタッフの対応が良かった」「トイレがちょっと…」みたいなことも含めて、生の声が出ているので、ここを整理するだけでもかなりヒントが見えてきます。
脇谷:数字だけじゃなくて、ちゃんと文章になった声も見に行くわけですね。
佐藤:はい。Analyticsと口コミ、この二つを見るだけでも、「今の体験のどこに問題がありそうか」がかなり浮かび上がってきます。
「現状診断パッケージ」としての支援イメージ
佐藤:こういう最初のセットアップを、単発の「現状診断パッケージ」みたいなイメージで提供できないか、という話もしましたよね。
一回10万円くらいのイメージで、
Analyticsの導入
基本的な指標の設定
1ヶ月分のデータのざっくりした読み解き
口コミ・レビューの整理
くらいまでをやって、「今どんなことが起きていそうか」を共有する。
そこから「何を優先的に改善するか」を一緒に決めていく、という入り方が、地方企業にはちょうど良いのかなと感じています。
マイナスを潰すことから始めるデザイン術
Webで起きているマイナスの典型パターン

脇谷:現状が見えてきたあと、どこから手を付けていくことが多いですか?
佐藤:基本的には、「マイナスが大きいところから潰していく」です。
Webで言えば、典型的なのはこんなパターンですね。
ページが重くて、開くのに時間がかかる
フォントサイズや行間のせいで、とにかく読みづらい
欲しい情報にたどり着くまでに、何階層も迷子になる
こういったところは、ユーザーが「なんかしんどいな」と感じて離脱しやすいポイントです。
店舗やリアルな場で起きているマイナス
佐藤:リアルなお店や施設だと、さっきのトイレの話がまさにそうで。
トイレが汚い、狭い、男女兼用で落ち着かない
席の間隔が狭すぎて、くつろげない
レジや受付の待ち時間が常にストレスになっている
こういうのって、わざわざ口コミに「トイレが〜」と書く人はそこまで多くないんですけど、確実に「次ここ選ぶかどうか」の判断には影響しているポイントなんですよね。
プラスより先に「ゼロに戻す」発想
佐藤:デザインというと、「何か新しいものを足す」「かっこいいものを上に乗せる」というイメージになりがちなんですけど、地方企業の再生で効くのはむしろ逆で。
まずは、体験を冷やしているマイナスをゼロに戻していくこと。
「ここがしんどい」「ここでストレスが溜まる」というポイントを一つひとつ潰していくことが、一番効くデザイン術だと思っています。
スタートアップ・中小企業のための実践ポイント
「細部のデザイン」にこだわる
脇谷:地方でも、新しく事業を始める会社や、スタートアップ的な動きをしている企業も増えてきていますよね。そういう会社には、どこからデザイン投資をしてほしいですか?
佐藤:僕は、スタートアップこそ「最初の一枚」にこだわった方がいいと思っています。
具体的には名刺ですね。
まだ実績もクライアントも少ないフェーズだからこそ、一枚の名刺にどれだけの熱量や美意識が込められているかが、そのまま企業の印象になる。
人数も少ないので、一人あたりの単価が多少高くなっても、トータルで見ればそこまで大きな金額にはならない。
だからこそ、ここはしっかり投資してほしいポイントだなと感じています。
プロダクトによっては、Webは「無理に高級に見せない」選択もあり
脇谷:一方で、Webサイトについてはどうですか?
佐藤:Webに関しては、「無理に高級に見せなくていい」というのが正直なところです。
フリー素材の写真をたくさん並べて、「それっぽい」サイトを作ろうとしがちなんですけど、それをやったところで、結局「この会社が何者なのか」はあまり伝わらない。
だったら、多少荒削りでも、代表やメンバーが日々の活動や考えをそのまま出しているSNSとかの方が、「人となり」や「温度感」は伝わりやすい場合も多いと思います。
情報を足すより、削っていく
佐藤:情報も同じで、「できること全部載せる」と、かえって何も伝わらなくなってしまう。
地方の企業やスタートアップほど、「本当に伝えたいことは何か」「どこを一番見てほしいのか」を絞っていくことが大事で、その意味では、「足すデザイン」より「削るデザイン」の方が、結果的にブランドとしてかっこよく見えることが多いと感じています。
earthcampus×JOOiが目指す地方支援のかたち
大手デザインファームが届かないゾーンを支える
脇谷:地方企業へのデザイン支援という話になると、大手のデザインファームもよく名前が挙がりますが、ああいうモデルだと届きにくい層もありますよね。
佐藤:そうですね。大手のデザインファームですとエンタープライズ向けの案件で、すごく価値のある仕事をされていますけど、中小企業や地方企業からすると、金額やプロジェクト規模の面で現実的ではないケースも多いと思います。
だからこそ、僕らはもう少し「小回りがきくモデル」でやりたいなと考えています。
小さなチームで「伴走」する
佐藤:イメージとしては、デザイン経営のハブとしてearthcampusが入りつつ、必要に応じてJOOiのデザイナーさんと小さなチームを組んでいくかたちです。
データとユーザーの声を集めて整理する人
どこにマイナスがあるかを見つけて、体験を設計し直す人
ビジュアルやコピーとして形にする人
こういった役割を、プロジェクトごとに必要な分だけ組み合わせていくイメージですね。
「地方から時代をつくる」土台づくりとしてのデザイン

佐藤:東京の大企業の案件ももちろん大事なんですけど、地方にいると、「ここにちゃんとデザインや発信が入れば、もっと世の中に知られていいのにな」と思う企業が本当に多いんです。
そういう会社が、自分たちの名前で価値を語れるようになること。
ユーザーにとってストレスの少ない体験を提供できるようになること。
そういった「土台づくり」としてのデザインを、地方から一緒にやっていきたいなと思っています。
JOOiとの協業でも、そういう企業さんとチームを組んでいけたら嬉しいですね。
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京都発クリエイティブエージェンシーearthcampus×JOOiが見据える地方企業を再生させるデザイン術とは?
投稿日:
2026/01/22
JOOiとearthcampusが協業を進めていくにあたって、もう一つ大きなテーマになっているのが「地方企業をどう支援していくか」です。
地方には、世界に一台しかない機械をつくっている会社や、大手ブランドに継続的に納品している技術企業が数多く存在します。にもかかわらず、ユーザーから見えるところには社名が出てこなかったり、Webサイトや発信の弱さから、事業機会や採用機会を逃してしまっているケースも少なくありません。
デザイン経営そのものの考え方や、感性・データ・AIのバランスについては、別の記事「真のデザイン経営とは?」で整理しています。
デザイン経営のURL
本記事では、その内容を踏まえたうえで、「地方企業をどう再生させていくか」という実務寄りの視点にフォーカスし、対談で出てきた具体的なアプローチをまとめていきます。
対談者紹介
佐藤 涼介

大学卒業後にビジネスコンサルティング会社を設立し、中小企業の経営・金融戦略・会計を支援。2017年に会社を売却し、クライアントに最適なクリエイティブを提供するearthcampus株式会社を設立。UXデザインを基盤にエンドユーザーの体験と「愛の循環」を重視したクリエイティブを手がけ、2022年からはJリーグクラブ「愛媛FC」のクリエイティブディレクターも務めている。
脇谷 光多

2019年にユナイテッド株式会社へ新卒入社し、複数プロダクトの新規営業を経験。その後、DXコンサルティング部門でインサイドセールスチームの立ち上げを担当。現在はユナイテッドグループの株式会社リベイスにて、審査制デザイナーマッチングサービス「JOOi」の事業統括を行っている。
地方企業が抱える発信の課題
「世界に一台の機械」が表に出てこない
脇谷:地方企業や地方のプロダクトの話になると、デザインに関わる方からよく「もったいない」という言葉を耳にします。
佐藤:地方に行くと、「世界に一台しかない機械を作っています」とか、「この前美容の〇〇にこれ納品しました」とか、本当にすごい技術やプロダクトを持っている会社がたくさんあります。
でも、間に代理店が入っていたりして、エンドユーザーからするとその会社の名前は一切出てこない。
表に出るブランド名は別の会社で、実際に価値をつくっている企業がどこなのかが見えない状態になっていることが多いです。
「良いものを作っていれば伝わる」はもう通用しない
脇谷:いわゆる「良いものを作っていれば、いつか誰かが見つけてくれる」という考え方に近い状態ですよね。
佐藤:そうですね。実際、それで何十年もやってこられた会社もありますし、老舗ほどその感覚が強いと思います。
ただ、今は「良いものを作る」がスタートラインでしかなくて、その先に「どう発信するか」「どう体験を設計するか」というレイヤーが乗ってきている。
そこに手を付けていないがゆえに、せっかくの技術や歴史が“存在しないこと”になってしまっているケースも少なくないと感じています。
データとユーザーの声から始める現状把握
最初の一歩は「Analyticsを入れて1ヶ月見る」
脇谷:そういう企業に対して、最初の一歩としてはどこから入ることが多いですか?
佐藤:いきなり大きなリブランディングをするというよりは、まず「現状をちゃんと見る」ところから始めることがほとんどですね。
具体的には、まずAnalyticsみたいな解析ツールを入れてもらう。
それも、導入して満足するのではなく、1ヶ月くらいはちゃんと数字を見るんです。
どのページから入ってきているのか
どこで離脱しているのか
直帰率が異常に高いページはどこか
こういうところを一緒に確認していきます。
口コミ・Googleレビューに出てくる「生の声」
佐藤:それに加えて、Googleレビューとか口コミも見に行きます。
ユーザーが何を褒めていて、何に対して不満を感じているのか。
「スタッフの対応が良かった」「トイレがちょっと…」みたいなことも含めて、生の声が出ているので、ここを整理するだけでもかなりヒントが見えてきます。
脇谷:数字だけじゃなくて、ちゃんと文章になった声も見に行くわけですね。
佐藤:はい。Analyticsと口コミ、この二つを見るだけでも、「今の体験のどこに問題がありそうか」がかなり浮かび上がってきます。
「現状診断パッケージ」としての支援イメージ
佐藤:こういう最初のセットアップを、単発の「現状診断パッケージ」みたいなイメージで提供できないか、という話もしましたよね。
一回10万円くらいのイメージで、
Analyticsの導入
基本的な指標の設定
1ヶ月分のデータのざっくりした読み解き
口コミ・レビューの整理
くらいまでをやって、「今どんなことが起きていそうか」を共有する。
そこから「何を優先的に改善するか」を一緒に決めていく、という入り方が、地方企業にはちょうど良いのかなと感じています。
マイナスを潰すことから始めるデザイン術
Webで起きているマイナスの典型パターン

脇谷:現状が見えてきたあと、どこから手を付けていくことが多いですか?
佐藤:基本的には、「マイナスが大きいところから潰していく」です。
Webで言えば、典型的なのはこんなパターンですね。
ページが重くて、開くのに時間がかかる
フォントサイズや行間のせいで、とにかく読みづらい
欲しい情報にたどり着くまでに、何階層も迷子になる
こういったところは、ユーザーが「なんかしんどいな」と感じて離脱しやすいポイントです。
店舗やリアルな場で起きているマイナス
佐藤:リアルなお店や施設だと、さっきのトイレの話がまさにそうで。
トイレが汚い、狭い、男女兼用で落ち着かない
席の間隔が狭すぎて、くつろげない
レジや受付の待ち時間が常にストレスになっている
こういうのって、わざわざ口コミに「トイレが〜」と書く人はそこまで多くないんですけど、確実に「次ここ選ぶかどうか」の判断には影響しているポイントなんですよね。
プラスより先に「ゼロに戻す」発想
佐藤:デザインというと、「何か新しいものを足す」「かっこいいものを上に乗せる」というイメージになりがちなんですけど、地方企業の再生で効くのはむしろ逆で。
まずは、体験を冷やしているマイナスをゼロに戻していくこと。
「ここがしんどい」「ここでストレスが溜まる」というポイントを一つひとつ潰していくことが、一番効くデザイン術だと思っています。
スタートアップ・中小企業のための実践ポイント
「細部のデザイン」にこだわる
脇谷:地方でも、新しく事業を始める会社や、スタートアップ的な動きをしている企業も増えてきていますよね。そういう会社には、どこからデザイン投資をしてほしいですか?
佐藤:僕は、スタートアップこそ「最初の一枚」にこだわった方がいいと思っています。
具体的には名刺ですね。
まだ実績もクライアントも少ないフェーズだからこそ、一枚の名刺にどれだけの熱量や美意識が込められているかが、そのまま企業の印象になる。
人数も少ないので、一人あたりの単価が多少高くなっても、トータルで見ればそこまで大きな金額にはならない。
だからこそ、ここはしっかり投資してほしいポイントだなと感じています。
プロダクトによっては、Webは「無理に高級に見せない」選択もあり
脇谷:一方で、Webサイトについてはどうですか?
佐藤:Webに関しては、「無理に高級に見せなくていい」というのが正直なところです。
フリー素材の写真をたくさん並べて、「それっぽい」サイトを作ろうとしがちなんですけど、それをやったところで、結局「この会社が何者なのか」はあまり伝わらない。
だったら、多少荒削りでも、代表やメンバーが日々の活動や考えをそのまま出しているSNSとかの方が、「人となり」や「温度感」は伝わりやすい場合も多いと思います。
情報を足すより、削っていく
佐藤:情報も同じで、「できること全部載せる」と、かえって何も伝わらなくなってしまう。
地方の企業やスタートアップほど、「本当に伝えたいことは何か」「どこを一番見てほしいのか」を絞っていくことが大事で、その意味では、「足すデザイン」より「削るデザイン」の方が、結果的にブランドとしてかっこよく見えることが多いと感じています。
earthcampus×JOOiが目指す地方支援のかたち
大手デザインファームが届かないゾーンを支える
脇谷:地方企業へのデザイン支援という話になると、大手のデザインファームもよく名前が挙がりますが、ああいうモデルだと届きにくい層もありますよね。
佐藤:そうですね。大手のデザインファームですとエンタープライズ向けの案件で、すごく価値のある仕事をされていますけど、中小企業や地方企業からすると、金額やプロジェクト規模の面で現実的ではないケースも多いと思います。
だからこそ、僕らはもう少し「小回りがきくモデル」でやりたいなと考えています。
小さなチームで「伴走」する
佐藤:イメージとしては、デザイン経営のハブとしてearthcampusが入りつつ、必要に応じてJOOiのデザイナーさんと小さなチームを組んでいくかたちです。
データとユーザーの声を集めて整理する人
どこにマイナスがあるかを見つけて、体験を設計し直す人
ビジュアルやコピーとして形にする人
こういった役割を、プロジェクトごとに必要な分だけ組み合わせていくイメージですね。
「地方から時代をつくる」土台づくりとしてのデザイン

佐藤:東京の大企業の案件ももちろん大事なんですけど、地方にいると、「ここにちゃんとデザインや発信が入れば、もっと世の中に知られていいのにな」と思う企業が本当に多いんです。
そういう会社が、自分たちの名前で価値を語れるようになること。
ユーザーにとってストレスの少ない体験を提供できるようになること。
そういった「土台づくり」としてのデザインを、地方から一緒にやっていきたいなと思っています。
JOOiとの協業でも、そういう企業さんとチームを組んでいけたら嬉しいですね。
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