
WEBデザイナー
地方企業を推進するデザインの秘訣とは?元有名デザイン企業デザイナーが解説
投稿日:
2025/05/09
地方企業を推進するデザインの秘訣とは?元有名デザイン企業デザイナーが解説
地方での仕事や暮らしに関心が集まるいま、地域に関わろうとする個人や企業は着実に増えています。
人口移動のトレンドや地方事業に向けた取り組みも各所で進んでいます。
しかし、地方での事業にはいくつか課題があるのも事実。
本記事では、実際に地方で事業を運営しながら、デザインの力で日々の課題に取り組んでいるデザイナーのKakisakoさんに具体の事業やどういった課題や解決方法があるのかインタビューを行いました。 この記事はそのインタビューをもとに地方で事業を進めたい方や、地方で働くデザイナーに向けてまとめます。
ぜひ最後までご覧ください。
登壇者情報

Kakisakoさん
HITOYAMA LANDSCAPE LLC. 代表。JOOi在籍デザイナー。
旧小学校を活用した農村体験型宿泊施設「NOTEL」を創業・運営。デザインとクリエイティブの知見を基盤に、〈宿〉というプロダクトを通じて“自然のなかで紡ぐ暮らし方”を伝え、地域の再生に取り組む。
前職はGoodpatch(マネージャー/BX・UI・UX)、CRAZYほかでアートディレクターを歴任し、2019年に独立・移住。2023年に現法人を設立、2024年にNOTELを開業。
地方移住の経緯
暮らしのイメージが最も鮮明だった
小豆島を選んだのは直感でした。候補地を巡る中で、ここだけ生活の像が鮮明に見え、東京で長く働いてきた私と妻の「自然の近くで暮らしたい」という思いにも合致したからです。移住は仕事より暮らしを優先し、距離感や日々のリズムが自分たちに合うと確信しました。
仕事中心から暮らし中心へ
移住後ほどなくコロナ禍になり、しばらくは暮らしに集中する時間が続きました。仕事中心の生活から“暮らし中心”へ向かいました。都会の美しさも好きですが、強く美しいと感じる瞬間は、こちらの風景や人の営みに多く、その実感が、いまもここに根を下ろす理由になっていますね。
次に具体的にどういった地方のプロジェクトに関わったか紹介させてください。
漁業組合の現地情報を言葉とビジュアルに落とし込む
まず現場をリサーチして、言葉にしデザインへ展開する

まず漁の現場に入りました。成り立ちは当代だけでなく先代・先々代まで遡って伺い、一緒に船に乗って締めの作業も経験し、市場にも同行。一次情報で“らしさ”を掴んだうえで、ブランドのコンセプトと方向性を言葉にし、ロゴ・カラー・世界観を設計。 撮影とトーン&マナーの定義、ブランドサイトのディレクション/制作まで通しで進めました。
見た目とメッセージをそろえ、選ばれる理由をはっきりさせる

ブランドが立ち上がると、組合としての“顔”が生まれ、認知の手がかりが増えました。クライアントの継続的な発信もあって、動画の視聴数が大きく伸びたり、海外からの視察やロゴ入りユニフォームの要望が増えたり。イメージが明確になったことで本質的な価値が伝わりやすくなり、広報だけでなく売上や採用にも良い影響が出ています。
小豆島のみかんをブランドとして確立する
風景と味を確かめ、言葉とロゴとトーンに具体化する

代表の方と複数回の1on1で想いを丁寧にたぐり、畑に通って風景と仕事のリズムを体で覚えました。自分でもみかんを食べ比べ、他園のプロダクトも購入して調査。
抽出した“らしさ”をコアに、コンセプトと言葉を定め、ロゴ・カラー・世界観を設計しました。
撮影とトーンの定義を含むブランドサイトのディレクション/制作、ECの立ち上げまで一貫して実装しました。さらに、みかんのワインやジュース、柑橘胡椒、配送箱などのパッケージも同じ軸でデザインしています。
一貫したブランドが選ばれる理由になる

出荷期はリピーター中心で早期に完売する状態が続き、みかんのワインも発売直後から好調でした。加工品は島内のお土産売り場にも並ぶように。強いアイデンティティが“信頼の印”となると、選ぶ理由が明確になります。もちろん、これは表層だけでは成立しません。事業と人の価値をこちらが正しく受け取り、抽出し、誠実に表現しました。 その前提が効いていると感じています。
デザイナーから経営者へ
経営の視点を持つために始めた宿の運営

地方の事業をデザインで支援する一方で、私自身も小豆島で宿の事業を運営しています。
旧小学校を活用した小さな宿で、名前は「NOTEL」です。自分の手で持ちたいというのも参画した理由の一つでした。 細部の完成度を上げることに向き合ってきましたが、現場で事業者と動いていると優先順位の置き方がズレる瞬間がある。たとえば“角のRを何ミリにするか”はデザイナーには重要でも、事業者の判断では後回しになることがある。その感覚を外側から理解するだけでなく、自分の体で掴みたかった。だからこそ事業を立ち上げ、「いま何を優先して進めるべきか」を自分で決める立場に立った。その積み重ねが、デザイナーとしての説得力につながりました。
経営視点から「デザイン」を捉え直す

経営をやってみて実感したのは、デザインの核そのものは変わらないけれど、優先順位の置き方は大きく変わるということです。NOTELの事業を回していると、「1pxの精度」より先に「いま何を動かすか」が前に出てきます。
ECに近い領域なら、画面の完成度も大切ですが、それ以上に“どうコマースを回すか”を優先します。
オンラインでは予約や集客の導線、オフラインではオペレーションや清掃まで含めた体験の質。どちらもデザインの範囲だけれど、経営ではその重みづけを常に動かし続ける感覚があります。
地方事業が直面している課題
買い手の減少、承継の難しさや人手不足
地方の企業を支援していると感じる課題があります。それは買い手が減っていくこと、事業を継ぐ人が見つからないこと、一緒に働く仲間が不足していることです。
こうした状況から“沈みがちな空気”が生まれ、日々の判断にも影響が出ます。
そのため挑戦に踏み出しにくくなりますが、プロダクトそのものの価値を磨くことに着目すれば、見えてくるものがあると思います。
価値を可視化してデザインに落とし込む
わかる・見える・届くの順番で提供する
私が最初にやるのは「価値の見える化」です。順番はいつも同じで、言葉→記号→体験。まず一緒に言葉にします。何が強みで、どこに誇りがあるのかを共有の言語にする。次に記号にします。合意した中身をロゴやモチーフ、トーン&マナーへ落とす。最後に体験にします。ウェブの導線や予約・購入の手触り、現場での接し方、そして“掃除のクオリティ”まで、価値が自然に伝わる状態を整える。最終的に「価値はここ・ここ・ここにある。だからこのロゴ、このモチーフ、このウェブサイトです」と一貫して語れるところまで持っていくのが目標です。
サイトと現地オペレーションを一体化し、体験をアップデートする
この順番を守ると、やること・やらないことの判断が早くなります。写真一枚、言葉一つ、ボタンの位置ひとつに理由が生まれ、現場の人たちが自分たちの仕事を“語れる”ようになる。一次産業の支援でも、「どこの産地か」や「誰のプロダクトか」を示す設計に切り替えた途端、直販の導線が強くなりました。選ばれる理由がはっきりし、レビューや紹介の言葉も揃ってくる。派手ではないけれど、 語りと記号と体験の向きをそろえるだけで、受け手の理解が一段深くなるのを何度も実感しています。
今後の展望

これからは、今は地域だけにとざさず、都心部や海外なの活動の幅を広げたいと思っているので、内的な美をとことん追及してそれを落とし込み、表現することをやっていきたいと思っています。というところにしたいなと思います!
突き詰めると、「美しさをつくる」「美しさを切り取る」という感覚に近いです。
課題解決の仕事は続けながらも、自分が本当に美しいと思うものを、無理に説明しすぎずに形にしていく。
わかってほしい、と強く求めるよりも、届くべき人に届けばいい。その積み重ねで、少しずつ風景は変わっていくはずだと感じています。
まとめ
Kakisakoさん、ありがとうございます。
本稿の要点は3つです。
価値の見える化
体験のアップデート
経営視点での「デザイン」
一次産業の支援で示したように、「どこの産地か」より「誰のプロダクトか」を明確にするだけで、直販の導線は強まります。小さく始めて、続けて磨く。過度に説明せず“美しさ”を形にする小さな更新を重ねる。こうした等身大のやり方が、地方企業を静かに、確実に前へ進めるデザインの秘訣だと考えています。
最後までご拝読いただきありがとうございます。
JOOiでは、地方事業に向けたデザイン支援を行っています。 こういったニーズがありましたら、ご相談ください。
・地域の文脈を“価値”として見える化したい
・ブランドの言葉/見た目/体験を一貫させたい
・オンライン(サイト・予約・EC)と現場の体験をつなぎたい
まずはお気軽にお問い合わせください。
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投稿日:
2025/05/09
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地方での仕事や暮らしに関心が集まるいま、地域に関わろうとする個人や企業は着実に増えています。
人口移動のトレンドや地方事業に向けた取り組みも各所で進んでいます。
しかし、地方での事業にはいくつか課題があるのも事実。
本記事では、実際に地方で事業を運営しながら、デザインの力で日々の課題に取り組んでいるデザイナーのKakisakoさんに具体の事業やどういった課題や解決方法があるのかインタビューを行いました。 この記事はそのインタビューをもとに地方で事業を進めたい方や、地方で働くデザイナーに向けてまとめます。
ぜひ最後までご覧ください。
登壇者情報

Kakisakoさん
HITOYAMA LANDSCAPE LLC. 代表。JOOi在籍デザイナー。
旧小学校を活用した農村体験型宿泊施設「NOTEL」を創業・運営。デザインとクリエイティブの知見を基盤に、〈宿〉というプロダクトを通じて“自然のなかで紡ぐ暮らし方”を伝え、地域の再生に取り組む。
前職はGoodpatch(マネージャー/BX・UI・UX)、CRAZYほかでアートディレクターを歴任し、2019年に独立・移住。2023年に現法人を設立、2024年にNOTELを開業。
地方移住の経緯
暮らしのイメージが最も鮮明だった
小豆島を選んだのは直感でした。候補地を巡る中で、ここだけ生活の像が鮮明に見え、東京で長く働いてきた私と妻の「自然の近くで暮らしたい」という思いにも合致したからです。移住は仕事より暮らしを優先し、距離感や日々のリズムが自分たちに合うと確信しました。
仕事中心から暮らし中心へ
移住後ほどなくコロナ禍になり、しばらくは暮らしに集中する時間が続きました。仕事中心の生活から“暮らし中心”へ向かいました。都会の美しさも好きですが、強く美しいと感じる瞬間は、こちらの風景や人の営みに多く、その実感が、いまもここに根を下ろす理由になっていますね。
次に具体的にどういった地方のプロジェクトに関わったか紹介させてください。
漁業組合の現地情報を言葉とビジュアルに落とし込む
まず現場をリサーチして、言葉にしデザインへ展開する

まず漁の現場に入りました。成り立ちは当代だけでなく先代・先々代まで遡って伺い、一緒に船に乗って締めの作業も経験し、市場にも同行。一次情報で“らしさ”を掴んだうえで、ブランドのコンセプトと方向性を言葉にし、ロゴ・カラー・世界観を設計。 撮影とトーン&マナーの定義、ブランドサイトのディレクション/制作まで通しで進めました。
見た目とメッセージをそろえ、選ばれる理由をはっきりさせる

ブランドが立ち上がると、組合としての“顔”が生まれ、認知の手がかりが増えました。クライアントの継続的な発信もあって、動画の視聴数が大きく伸びたり、海外からの視察やロゴ入りユニフォームの要望が増えたり。イメージが明確になったことで本質的な価値が伝わりやすくなり、広報だけでなく売上や採用にも良い影響が出ています。
小豆島のみかんをブランドとして確立する
風景と味を確かめ、言葉とロゴとトーンに具体化する

代表の方と複数回の1on1で想いを丁寧にたぐり、畑に通って風景と仕事のリズムを体で覚えました。自分でもみかんを食べ比べ、他園のプロダクトも購入して調査。
抽出した“らしさ”をコアに、コンセプトと言葉を定め、ロゴ・カラー・世界観を設計しました。
撮影とトーンの定義を含むブランドサイトのディレクション/制作、ECの立ち上げまで一貫して実装しました。さらに、みかんのワインやジュース、柑橘胡椒、配送箱などのパッケージも同じ軸でデザインしています。
一貫したブランドが選ばれる理由になる

出荷期はリピーター中心で早期に完売する状態が続き、みかんのワインも発売直後から好調でした。加工品は島内のお土産売り場にも並ぶように。強いアイデンティティが“信頼の印”となると、選ぶ理由が明確になります。もちろん、これは表層だけでは成立しません。事業と人の価値をこちらが正しく受け取り、抽出し、誠実に表現しました。 その前提が効いていると感じています。
デザイナーから経営者へ
経営の視点を持つために始めた宿の運営

地方の事業をデザインで支援する一方で、私自身も小豆島で宿の事業を運営しています。
旧小学校を活用した小さな宿で、名前は「NOTEL」です。自分の手で持ちたいというのも参画した理由の一つでした。 細部の完成度を上げることに向き合ってきましたが、現場で事業者と動いていると優先順位の置き方がズレる瞬間がある。たとえば“角のRを何ミリにするか”はデザイナーには重要でも、事業者の判断では後回しになることがある。その感覚を外側から理解するだけでなく、自分の体で掴みたかった。だからこそ事業を立ち上げ、「いま何を優先して進めるべきか」を自分で決める立場に立った。その積み重ねが、デザイナーとしての説得力につながりました。
経営視点から「デザイン」を捉え直す

経営をやってみて実感したのは、デザインの核そのものは変わらないけれど、優先順位の置き方は大きく変わるということです。NOTELの事業を回していると、「1pxの精度」より先に「いま何を動かすか」が前に出てきます。
ECに近い領域なら、画面の完成度も大切ですが、それ以上に“どうコマースを回すか”を優先します。
オンラインでは予約や集客の導線、オフラインではオペレーションや清掃まで含めた体験の質。どちらもデザインの範囲だけれど、経営ではその重みづけを常に動かし続ける感覚があります。
地方事業が直面している課題
買い手の減少、承継の難しさや人手不足
地方の企業を支援していると感じる課題があります。それは買い手が減っていくこと、事業を継ぐ人が見つからないこと、一緒に働く仲間が不足していることです。
こうした状況から“沈みがちな空気”が生まれ、日々の判断にも影響が出ます。
そのため挑戦に踏み出しにくくなりますが、プロダクトそのものの価値を磨くことに着目すれば、見えてくるものがあると思います。
価値を可視化してデザインに落とし込む
わかる・見える・届くの順番で提供する
私が最初にやるのは「価値の見える化」です。順番はいつも同じで、言葉→記号→体験。まず一緒に言葉にします。何が強みで、どこに誇りがあるのかを共有の言語にする。次に記号にします。合意した中身をロゴやモチーフ、トーン&マナーへ落とす。最後に体験にします。ウェブの導線や予約・購入の手触り、現場での接し方、そして“掃除のクオリティ”まで、価値が自然に伝わる状態を整える。最終的に「価値はここ・ここ・ここにある。だからこのロゴ、このモチーフ、このウェブサイトです」と一貫して語れるところまで持っていくのが目標です。
サイトと現地オペレーションを一体化し、体験をアップデートする
この順番を守ると、やること・やらないことの判断が早くなります。写真一枚、言葉一つ、ボタンの位置ひとつに理由が生まれ、現場の人たちが自分たちの仕事を“語れる”ようになる。一次産業の支援でも、「どこの産地か」や「誰のプロダクトか」を示す設計に切り替えた途端、直販の導線が強くなりました。選ばれる理由がはっきりし、レビューや紹介の言葉も揃ってくる。派手ではないけれど、 語りと記号と体験の向きをそろえるだけで、受け手の理解が一段深くなるのを何度も実感しています。
今後の展望

これからは、今は地域だけにとざさず、都心部や海外なの活動の幅を広げたいと思っているので、内的な美をとことん追及してそれを落とし込み、表現することをやっていきたいと思っています。というところにしたいなと思います!
突き詰めると、「美しさをつくる」「美しさを切り取る」という感覚に近いです。
課題解決の仕事は続けながらも、自分が本当に美しいと思うものを、無理に説明しすぎずに形にしていく。
わかってほしい、と強く求めるよりも、届くべき人に届けばいい。その積み重ねで、少しずつ風景は変わっていくはずだと感じています。
まとめ
Kakisakoさん、ありがとうございます。
本稿の要点は3つです。
価値の見える化
体験のアップデート
経営視点での「デザイン」
一次産業の支援で示したように、「どこの産地か」より「誰のプロダクトか」を明確にするだけで、直販の導線は強まります。小さく始めて、続けて磨く。過度に説明せず“美しさ”を形にする小さな更新を重ねる。こうした等身大のやり方が、地方企業を静かに、確実に前へ進めるデザインの秘訣だと考えています。
最後までご拝読いただきありがとうございます。
JOOiでは、地方事業に向けたデザイン支援を行っています。 こういったニーズがありましたら、ご相談ください。
・地域の文脈を“価値”として見える化したい
・ブランドの言葉/見た目/体験を一貫させたい
・オンライン(サイト・予約・EC)と現場の体験をつなぎたい
まずはお気軽にお問い合わせください。
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投稿日:
2025/05/09
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地方での仕事や暮らしに関心が集まるいま、地域に関わろうとする個人や企業は着実に増えています。
人口移動のトレンドや地方事業に向けた取り組みも各所で進んでいます。
しかし、地方での事業にはいくつか課題があるのも事実。
本記事では、実際に地方で事業を運営しながら、デザインの力で日々の課題に取り組んでいるデザイナーのKakisakoさんに具体の事業やどういった課題や解決方法があるのかインタビューを行いました。 この記事はそのインタビューをもとに地方で事業を進めたい方や、地方で働くデザイナーに向けてまとめます。
ぜひ最後までご覧ください。
登壇者情報

Kakisakoさん
HITOYAMA LANDSCAPE LLC. 代表。JOOi在籍デザイナー。
旧小学校を活用した農村体験型宿泊施設「NOTEL」を創業・運営。デザインとクリエイティブの知見を基盤に、〈宿〉というプロダクトを通じて“自然のなかで紡ぐ暮らし方”を伝え、地域の再生に取り組む。
前職はGoodpatch(マネージャー/BX・UI・UX)、CRAZYほかでアートディレクターを歴任し、2019年に独立・移住。2023年に現法人を設立、2024年にNOTELを開業。
地方移住の経緯
暮らしのイメージが最も鮮明だった
小豆島を選んだのは直感でした。候補地を巡る中で、ここだけ生活の像が鮮明に見え、東京で長く働いてきた私と妻の「自然の近くで暮らしたい」という思いにも合致したからです。移住は仕事より暮らしを優先し、距離感や日々のリズムが自分たちに合うと確信しました。
仕事中心から暮らし中心へ
移住後ほどなくコロナ禍になり、しばらくは暮らしに集中する時間が続きました。仕事中心の生活から“暮らし中心”へ向かいました。都会の美しさも好きですが、強く美しいと感じる瞬間は、こちらの風景や人の営みに多く、その実感が、いまもここに根を下ろす理由になっていますね。
次に具体的にどういった地方のプロジェクトに関わったか紹介させてください。
漁業組合の現地情報を言葉とビジュアルに落とし込む
まず現場をリサーチして、言葉にしデザインへ展開する

まず漁の現場に入りました。成り立ちは当代だけでなく先代・先々代まで遡って伺い、一緒に船に乗って締めの作業も経験し、市場にも同行。一次情報で“らしさ”を掴んだうえで、ブランドのコンセプトと方向性を言葉にし、ロゴ・カラー・世界観を設計。 撮影とトーン&マナーの定義、ブランドサイトのディレクション/制作まで通しで進めました。
見た目とメッセージをそろえ、選ばれる理由をはっきりさせる

ブランドが立ち上がると、組合としての“顔”が生まれ、認知の手がかりが増えました。クライアントの継続的な発信もあって、動画の視聴数が大きく伸びたり、海外からの視察やロゴ入りユニフォームの要望が増えたり。イメージが明確になったことで本質的な価値が伝わりやすくなり、広報だけでなく売上や採用にも良い影響が出ています。
小豆島のみかんをブランドとして確立する
風景と味を確かめ、言葉とロゴとトーンに具体化する

代表の方と複数回の1on1で想いを丁寧にたぐり、畑に通って風景と仕事のリズムを体で覚えました。自分でもみかんを食べ比べ、他園のプロダクトも購入して調査。
抽出した“らしさ”をコアに、コンセプトと言葉を定め、ロゴ・カラー・世界観を設計しました。
撮影とトーンの定義を含むブランドサイトのディレクション/制作、ECの立ち上げまで一貫して実装しました。さらに、みかんのワインやジュース、柑橘胡椒、配送箱などのパッケージも同じ軸でデザインしています。
一貫したブランドが選ばれる理由になる

出荷期はリピーター中心で早期に完売する状態が続き、みかんのワインも発売直後から好調でした。加工品は島内のお土産売り場にも並ぶように。強いアイデンティティが“信頼の印”となると、選ぶ理由が明確になります。もちろん、これは表層だけでは成立しません。事業と人の価値をこちらが正しく受け取り、抽出し、誠実に表現しました。 その前提が効いていると感じています。
デザイナーから経営者へ
経営の視点を持つために始めた宿の運営

地方の事業をデザインで支援する一方で、私自身も小豆島で宿の事業を運営しています。
旧小学校を活用した小さな宿で、名前は「NOTEL」です。自分の手で持ちたいというのも参画した理由の一つでした。 細部の完成度を上げることに向き合ってきましたが、現場で事業者と動いていると優先順位の置き方がズレる瞬間がある。たとえば“角のRを何ミリにするか”はデザイナーには重要でも、事業者の判断では後回しになることがある。その感覚を外側から理解するだけでなく、自分の体で掴みたかった。だからこそ事業を立ち上げ、「いま何を優先して進めるべきか」を自分で決める立場に立った。その積み重ねが、デザイナーとしての説得力につながりました。
経営視点から「デザイン」を捉え直す

経営をやってみて実感したのは、デザインの核そのものは変わらないけれど、優先順位の置き方は大きく変わるということです。NOTELの事業を回していると、「1pxの精度」より先に「いま何を動かすか」が前に出てきます。
ECに近い領域なら、画面の完成度も大切ですが、それ以上に“どうコマースを回すか”を優先します。
オンラインでは予約や集客の導線、オフラインではオペレーションや清掃まで含めた体験の質。どちらもデザインの範囲だけれど、経営ではその重みづけを常に動かし続ける感覚があります。
地方事業が直面している課題
買い手の減少、承継の難しさや人手不足
地方の企業を支援していると感じる課題があります。それは買い手が減っていくこと、事業を継ぐ人が見つからないこと、一緒に働く仲間が不足していることです。
こうした状況から“沈みがちな空気”が生まれ、日々の判断にも影響が出ます。
そのため挑戦に踏み出しにくくなりますが、プロダクトそのものの価値を磨くことに着目すれば、見えてくるものがあると思います。
価値を可視化してデザインに落とし込む
わかる・見える・届くの順番で提供する
私が最初にやるのは「価値の見える化」です。順番はいつも同じで、言葉→記号→体験。まず一緒に言葉にします。何が強みで、どこに誇りがあるのかを共有の言語にする。次に記号にします。合意した中身をロゴやモチーフ、トーン&マナーへ落とす。最後に体験にします。ウェブの導線や予約・購入の手触り、現場での接し方、そして“掃除のクオリティ”まで、価値が自然に伝わる状態を整える。最終的に「価値はここ・ここ・ここにある。だからこのロゴ、このモチーフ、このウェブサイトです」と一貫して語れるところまで持っていくのが目標です。
サイトと現地オペレーションを一体化し、体験をアップデートする
この順番を守ると、やること・やらないことの判断が早くなります。写真一枚、言葉一つ、ボタンの位置ひとつに理由が生まれ、現場の人たちが自分たちの仕事を“語れる”ようになる。一次産業の支援でも、「どこの産地か」や「誰のプロダクトか」を示す設計に切り替えた途端、直販の導線が強くなりました。選ばれる理由がはっきりし、レビューや紹介の言葉も揃ってくる。派手ではないけれど、 語りと記号と体験の向きをそろえるだけで、受け手の理解が一段深くなるのを何度も実感しています。
今後の展望

これからは、今は地域だけにとざさず、都心部や海外なの活動の幅を広げたいと思っているので、内的な美をとことん追及してそれを落とし込み、表現することをやっていきたいと思っています。というところにしたいなと思います!
突き詰めると、「美しさをつくる」「美しさを切り取る」という感覚に近いです。
課題解決の仕事は続けながらも、自分が本当に美しいと思うものを、無理に説明しすぎずに形にしていく。
わかってほしい、と強く求めるよりも、届くべき人に届けばいい。その積み重ねで、少しずつ風景は変わっていくはずだと感じています。
まとめ
Kakisakoさん、ありがとうございます。
本稿の要点は3つです。
価値の見える化
体験のアップデート
経営視点での「デザイン」
一次産業の支援で示したように、「どこの産地か」より「誰のプロダクトか」を明確にするだけで、直販の導線は強まります。小さく始めて、続けて磨く。過度に説明せず“美しさ”を形にする小さな更新を重ねる。こうした等身大のやり方が、地方企業を静かに、確実に前へ進めるデザインの秘訣だと考えています。
最後までご拝読いただきありがとうございます。
JOOiでは、地方事業に向けたデザイン支援を行っています。 こういったニーズがありましたら、ご相談ください。
・地域の文脈を“価値”として見える化したい
・ブランドの言葉/見た目/体験を一貫させたい
・オンライン(サイト・予約・EC)と現場の体験をつなぎたい
まずはお気軽にお問い合わせください。
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