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投稿日:
2024.01.01
理想と現実のギャップを埋めるために
「Webデザイナーってオシャレで自由そう」「未経験でもなれる」「リモートで場所に縛られず働ける」——そんなイメージを抱いて、Webデザインを学び始める人が増えています。デジタル社会が進む中でWebデザイナーは確かに必要不可欠な職業ですが、現場のリアルを知っている人ほど口にするのが「Webデザイナーはやめとけ」という一言です。
本記事では、そう言われる理由や現場で働く人たちの声、職種としての厳しさと魅力の両面を丁寧に紐解いていきます。Webデザイナーの仕事に憧れる方や、転職を検討している方が「理想」と「現実」の間にあるギャップを理解し、納得のいくキャリア選択ができるよう、現場視点で解説していきます。
Webデザイナーの基本的な仕事内容
デザイン業務の実際
Webデザイナーの最も基本的な役割は「ビジュアルデザイン」です。クライアントやディレクターの要望をもとに、Webサイトやバナー、ECサイトのUIを視覚的に設計します。PhotoshopやIllustrator、Figma、Adobe XDなどを使用し、色彩設計、フォント選定、余白設計まで細かく対応します。
また、UI/UXを意識した設計が求められるため、ユーザー視点で「使いやすいか」「情報が伝わりやすいか」といった設計思考も欠かせません。単なる見た目のデザインではなく、サイトの目的達成を支える戦略的なデザイン力が必要とされます。
さらに昨今では、スマートフォンやタブレットといったマルチデバイス対応も必須。レスポンシブ設計やアクセシビリティ対応など、技術的な配慮が必要な場面も増えています。
コーディング業務の範囲
業務によってはデザインだけでなく、HTMLやCSSを使ったマークアップ作業もWebデザイナーの担当範囲となります。特に中小の制作会社やスタートアップ、フリーランスでは「デザイン+コーディング」をセットで行うことがスタンダードです。
JavaScriptやjQuery、CMS(WordPressなど)と連携する必要がある場合、より高度なコーディングスキルも求められます。視覚的に美しいデザインを、動作する形に落とし込むまでがWebデザイナーの責任範囲であることも多く、技術的素養が仕事の幅を大きく左右します。
ディレクション・提案業務
Webデザイナーは単に「言われた通りに作る」だけでなく、時には企画や設計フェーズから参加することもあります。競合分析をした上で、ワイヤーフレームを作成し、クライアントの課題に応じた提案を行うなど、上流工程にも携わります。
さらに、社内での連携やディレクターとの調整、クライアントとの折衝においてもデザイナーが前に出る場面は少なくありません。提案力、交渉力、そして課題解決力までが求められる仕事なのです。
予想外に多い雑務の実態
デザインやコーディングといった「目立つ作業」以外にも、細かな雑務が日々の業務を圧迫します。具体的には以下のようなタスクです。

社内外の打ち合わせ資料の作成
デザインの確認チェックリストの作成
修正指示書への対応・バージョン管理
デザインデータの整理・納品形式への変換
コミュニケーション履歴の管理
こうした業務の積み重ねが、デザイナーの負担を想像以上に増やしている現実があります。
Webデザイナーの1日のスケジュール
制作会社のWebデザイナーの1日
9:30 出社・チームミーティング
10:00 バナー制作・レビュー対応
12:30 昼休憩
13:30 Webサイトの修正対応・クライアント打ち合わせ
16:00 コーディング作業・ブラウザチェック
18:30 翌日準備・進捗共有・退勤
複数案件を並行してこなす必要がある制作会社では、時間配分の柔軟性が求められます。突然の修正依頼に対応しつつ、締切を厳守するバランス感覚が重要です。
事業会社のWebデザイナーの1日
10:00 出社・KPI確認
10:30 マーケチームとランディングページ改善会議
13:00 UX改善のためのユーザーテスト設計
15:00 社内デザインシステムの整備
17:00 デザイン案レビュー・データ計測
18:30 退勤
自社サービスの改善を担当するWebデザイナーは、マーケや開発との連携が多く、分析的な思考や中長期視点が求められます。
フリーランスWebデザイナーの1日
8:30 メールチェック・タスク整理
9:30 既存案件の修正対応
13:00 新規案件の提案資料作成
15:00 クライアントミーティング
17:00 納品準備・請求書作成
19:00 SNS更新・ポートフォリオ整理
フリーランスは自己管理が全て。作業効率、営業、事務処理まで含めた「経営者視点」が必要になります。
繁忙期と閑散期の業務変化
繁忙期:年度末(3月)、年末、キャンペーン期間前など
閑散期:GW明け〜初夏、お盆明け、年始〜1月中旬など
繁忙期には残業が常態化する一方、閑散期には学習やリスキリングの時間にあてることも可能。自身のスキルアップや市場価値向上に取り組む絶好のタイミングでもあります。
Webデザイナーの労働環境の実態
労働時間と残業の実態
Webデザイナーの労働時間は職場や案件によって大きく異なりますが、制作会社においては「納期ありき」の働き方が根強く、残業は日常的という声が多く聞かれます。特に月末や納期直前は終電までの作業、休日出勤という事例も珍しくありません。
一方で、近年は働き方改革の影響やクラウドツールの発展によって、労働時間の短縮に取り組む企業も増えています。フレックスタイム制や裁量労働制を導入し、生産性向上と働きやすさを両立させる動きも見られます。
リモートワークとオフィスワークの比率
コロナ禍を経て、Webデザイナーの働き方にも大きな変化がありました。リモート対応が可能な職種であるため、在宅勤務が当たり前になった企業も多く、フリーランスや事業会社ではフルリモートの例も増えています。
ただし、制作会社では「対面でのやりとりが前提」となるケースも依然として多く、完全なフルリモート環境が整っていない現場も少なくありません。プロジェクトごとにSlackやZoomを活用し、場所に縛られない柔軟なワークスタイルが進んでいます。
職場環境と使用機材
デザイナーにとって、使用機材やソフトウェアは作業効率を大きく左右します。MacBook Proや高解像度の外部モニター、ペンタブレット、Adobe Creative Cloudなどの使用が一般的です。
また、最近ではFigmaやSketchといったクラウドベースのツールが主流となり、ブラウザ上でのリアルタイム共同作業が可能となっています。作業場所を問わない環境整備が進み、物理的な制約が減ってきたことはWebデザイナーの追い風となっています。
ワークライフバランスの実態
Webデザイナーの働き方は柔軟で自由に見える一方、納期やクライアント都合に左右されやすいため、プライベートとの両立が難しいという課題も存在します。とくに小規模の制作会社やフリーランスでは「仕事が終わるまで終わらない」文化が根強く残っていることも。
一方、事業会社や大手企業では残業の抑制や有休取得が推進され、比較的安定した働き方が可能なケースも増えています。業界全体としても、「燃え尽きる働き方」から「継続可能な働き方」へシフトしつつある印象です。
業種・業態別のWebデザイナー業務の違い
制作会社のWebデザイナーの実態
複数のクライアントを同時に抱える制作会社では、スピード感とマルチタスク能力が重視されます。納期が迫る中で複数案件を並行し、限られた工数で最大限のクオリティを出すという働き方は、大きなプレッシャーとも隣り合わせです。
その反面、様々な業種・業界の案件に関わることができ、デザイナーとしての経験値を一気に積むことができる環境でもあります。
広告代理店のWebデザイナーの実態
広告代理店で働くWebデザイナーは、キャンペーンLPやバナーなど広告施策に紐づくビジュアル制作が中心です。スピード勝負であることが多く、1日数本のバナーを制作することも。
広告文言やマーケティングの知識を持ち、消費者の反応を設計に反映できるセンスが求められます。流行やSNSの文脈を捉えたデザイン提案ができる人材が重宝されます。
事業会社(自社サイト)のWebデザイナーの実態
事業会社では自社サービスやECサイトの改善・運用を担当します。長期的な視点でデザインに取り組むことができ、PDCAサイクルを回しながら徐々に成果を積み上げることが可能です。
特にUI/UXデザインに関心がある方には適した環境といえます。自社サービスに深く関わるため、数値を元に改善案を出し、ユーザー行動に基づいたデザインを追求するスタイルが特徴です。
フリーランスWebデザイナーの実態
フリーランスのWebデザイナーは、営業・契約・制作・納品・請求・顧客対応まで全てを一人でこなします。自由度が高い一方で、責任も大きく、技術力・交渉力・マーケティング力といった総合力が試される立場です。
受注までの仕組み化(ポートフォリオ、SNS、営業チャネルの構築)が重要であり、安定して案件を得られるまでに時間がかかる点も課題です。
Webデザイナーは、なぜやめとけと言われるのか?
Webデザイナーが体力的に厳しい理由
修正依頼が多く発生しがち
短納期でスケジュールが圧迫されやすい
長時間パソコンの前に座り続ける
これらの要因から、肩こり・眼精疲労・腰痛など身体的な不調を訴える人が多いのも事実です。特に若手のうちは気合で乗り切ってしまいがちですが、継続的な働き方を考える上では無理のない作業環境づくりが必要です。
Webデザイナーがメンタル的に厳しい理由
クライアントや社内ディレクターからの「無茶振り」
意図の伝わらないフィードバック
曖昧な要望に振り回される
これらは「自分の仕事に自信が持てない」「何をどう直せばいいのか分からない」といった不安を招き、モチベーションの低下につながります。フィードバックを受け止める力と、的確に返すコミュニケーションスキルが求められる職業です。
現役Webデザイナーが語る仕事の魅力
やりがいを感じる瞬間
自分が作ったサイトが公開されたとき
クライアントから「ありがとう」と感謝されたとき
サイトの改善が数値に反映されたとき
これらの瞬間に「この仕事をやっていて良かった」と感じるWebデザイナーは多いです。ビジュアルを通して社会に影響を与えられる実感は、他には代えがたい魅力です。
実際に直面する困難と対処法
困難の多くはコミュニケーションとスケジュール管理に集約されます。以下のような工夫で乗り切る例が多くあります。
事前に明確なヒアリングシートを用意
クライアントとの認識齟齬を防ぐためのプロトタイプ提出
納期を「余裕を持って」提示し、修正時間を確保
地味な努力の積み重ねが、良好な関係構築とクオリティ維持につながります。
Webデザイナーをやめておくべき人の特徴
細かい作業が苦手な人
ピクセル単位での調整や、視覚的なバランスの微調整など、Webデザインは細部にこだわる仕事の連続です。曖昧さに耐えられない、繰り返し作業が苦手な人には不向きです。
変化を嫌う人
Web業界はとにかく変化が早く、2年前の常識がすでに通用しないことも。新しいツール、技術、トレンドに興味を持てない人は取り残されやすくなります。
柔軟な対応ができない人
「指示通りに作ればいい」というスタンスではなく、途中での仕様変更や方向転換にも柔軟に対応できる人材が求められます。変化に対する許容力が、継続的な活躍のカギとなります。
Webデザイナーに向いている人の特徴

ものづくりが好きな人
Webデザインは「自分のアイデアが形になる仕事」です。創作に楽しさを感じられる人は、Webデザイナーとして自然にモチベーションを維持できます。
トレンドに敏感な人
最新のUI/UX、配色、フォント、レイアウトなど、日々進化するWebの世界を「面白い」と思える人は、自然とスキルを伸ばしやすい傾向にあります。
好奇心があり、新しいものが好き
新しいツールや技術に触れることが好きな人は、成長スピードも早く、柔軟性にも優れています。学ぶことを楽しめる人こそ、長くWebデザイナーとして活躍できます。
まとめ
Webデザイナーという職業には、見た目の華やかさとは裏腹に、体力的・精神的に厳しい側面も存在します。「やめとけ」と言われる背景には、納期のプレッシャー、評価の不透明さ、過酷な働き方など、多くの現実があります。
しかし同時に、クリエイティブなものづくりに携わり、ユーザーの心を動かす体験を設計できる、非常にやりがいのある仕事でもあります。
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