B2Bシステムや社内システムのデザインにおいて気を付けるべき点を現役UXデザイナーが解説

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B2Bシステムや社内システムのデザインにおいて気を付けるべき点を現役UXデザイナーが解説

投稿日:

2024.01.01

デジタルトランスフォーメーション(DX)は工数のかかる業務システムを改善させ、サブスクリプションモデルが一般化し、SaaS は人事・会計・SFA・生産管理などあらゆる領域で雨後の筍のように登場しています。乗り換えコストが劇的に下がったいま、プロダクト体験そのものが競争力の本丸となり、「b2b ui uxデザイン」が経営課題として浮上しました。

加えて B2B では、情報を集める“選択者”、予算を握る“購買者”、実際に操作する“利用者”が分離しているのが常です。導入フェーズでは情報システム部門、稼働後はカスタマーサクセス、さらには経営企画や内部監査までが関与し、複数の利害が複雑に絡み合います。本稿では、B2B/社内システムの改善事例をベースに、UX デザイナーが現場で実践している設計・運用の勘所を体系的に整理します。

B2BサービスとB2CサービスのUI/UXの違い

B2C サービスでは、ユーザーの感情を直接刺激する楽しさや心地よさが購買行動に直結します。一方 B2B では、「業務における成果」や「業務プロセスにおいてのリスクがないか」が評価対象になります。それでも最終的な価値を決めるのは、日々システムを操作する現場担当者です。彼らが UX に不満を抱けば利用率は急激に落ち、ROI は下がります。B2B プロダクトは「機能が多いほど良い」という単純な評価軸では測れず、組織全体のワークフローにどれだけ自然に溶け込むかという複合的な UX 指標で判断されるのが特徴です。

B2BサービスのUI/UXが抱える制約の問題

B2B プロダクトでは検証期間が長期化しやすく、PoC やトライアルで現場の声を吸い上げるまでに半年以上を要することも珍しくありません。その間に関係者が増え、要件が膨張することで「誰のための UI なのか」が曖昧になるリスクが高まります。また、権限管理や監査ログ、シングルサインオンなどの非機能要件が UX に直結します。部門ごとに業務フローが異なるため、単に表層デザインを統一するだけではかえって混乱を招きます。ロールベースの UI 設計や条件付きレイアウトなど、部門間の差異を吸収するアプローチが欠かせません。

B2Bサービスで発生しやすいUX課題

B2Bの現場で繰り返し起きるUX課題は、大きく3つに集約できます。まず、価値の伝わらなさです。導入前後のKPIがきちんと計測・共有されず、投資の効果を経営層が実感できない。これでは良い改善も長続きしません。次に、操作の複雑化です。開発者の都合で組まれたワークフローが現場の実情と噛み合わず、気づけばExcelや紙に逆戻りしてしまう。最後は、運用の属人化です。初期のオンボーディングで止まり、継続学習の設計がないまま担当が交代するたびに問い合わせが膨れ上がる。-どれも“プロダクトが現場の毎日とつながっていない”ときに起きる症状です。

管理画面が UX のボトルネックになる理由

設定ミスひとつが全社の業務停止につながるのが管理画面です。だからこそ、安心感と操作効率の両立が欠かせません。ワークフローでの誤操作防止、二段階確認、インラインバリデーションは前提として備えたいところです。そのうえで、「いつ・誰が・何を・どう変えたか」を即座に追える履歴タイムラインを用意しておくと、原因特定から復旧までの時間がぐっと短くなります。状態の可視化とログ追跡がかみ合えば、エラーの影響範囲を瞬時に見渡せるようになり、システムへの信頼度は目に見えて高まります。

B2BサービスにおけるUI/UXデザインの重要性

B2B企業がUXに取り組み始めた背景

背景には3つの構造変化があります。まず、SaaS市場で顧客獲得コスト(CAC)が高止まりしている現状。高いコストで連れてきたお客様をUXの悪さで離脱させてしまっては投資を回収できません。次に、Product‑Led Growth(PLG)へのシフトです。無償トライアルやフリーミアムから有償へ移行していただく決め手は、結局オンボーディングの心地よさに集約されます。そして、リモートワークが常態化し、対面の手厚いフォローが難しくなったこと。プロダクトそのものが主要な顧客接点になった今、UXは営業やCSの延長ではなく、事業の基盤そのものだと言えます。

業務効率とユーザー満足度を両立させるポイント

使いやすさと業務効率はトレードオフではありません。鍵は役割別UIプログレッシブ・ディスクロージャ(段階的開示)の設計です。管理者には全体を俯瞰できるダッシュボードを、担当者には今日やるべきことが自然に並ぶ時系列タスクビューを。それぞれの視点に合わせて見せ方を切り替えるだけで、迷いが減ります。さらに、利用頻度の高い操作を学習して配置を微調整するデータドリブンなUIを組み合わせると、「使うほど自分に馴染む」感覚が生まれ、定着率が伸びていきます。

顧客関係性構築におけるUXの役割

かつてB2Bは「最後は営業の信頼関係」で決まると言われました。今もその重要性は変わりませんが、初回体験の段階ではプロダクト自体が“無言の営業担当”になります。説明書よりも、実際に触ったときの“つまずかなさ”や“ていねいさ”のほうが、価値提案としてずっと強い説得力を持ちます。

業務効率化とユーザー満足度の両立

まとめると、役割別UI+段階的開示+行動データにもとづく配置最適化という三点セットを回せば、学習コストを抑えながら処理時間を短縮でき、同時にNPSの向上も狙えます。効率と満足を両立させる王道の組み合わせです。

B2BサービスのUI/UXデザイン設計プロセス

設計は5つの段階で進めます。

戦略では、経営層と現場の双方が納得できるKGIとKPIを定義します。

要件では、ペルソナとユーザージャーニーをスプリントごとに更新し、MoSCoW法で優先度を確定。

構造では、サービスブループリントでバックエンド連携を見える化し、詰まりやすい箇所を洗い出します。

骨格では、Figmaで業務コンポーネント・ライブラリを整備し、再利用可能な部品として合意をとります。

表層では、WCAG 2.2 AAに準拠したコントラスト比やフォントサイズを設定し、ブランドガイドと矛盾がないかを確認します。段階を飛ばさずに歩を進めることが、後戻りコストを最小化する最短ルートです。

B2BサービスのUI/UXデザイン成功事例

ケーススタディ①:製造業向け IoT プラットフォーム「ProdFlow」

国内外23工場・4,800名が使う「ProdFlow」では、センサーの異常アラートが1日300件も届き、現場は“アラーム疲れ”に陥っていました。チームは12回の現場シャドーイングで実態を見に行き、経営層にはジョブ理論の観点でヒアリング。求められていたのは、各工場を横並びで比較できるランキングでした。アラートは重要度で3段階に整理し、経営向けのKPIビューと現場向けのリアルタイムビューを分離。しきい値やシフトをGUIで変えられるセルフ設定ウィザードも用意しました。結果、不要通知は70%減、問い合わせ工数は月120時間から45時間へ。可視化機能の利用率は18%から64%へ跳ね上がりました。学びは2つ。KPIを「問い合わせ削減」ではなく「アラートの質の向上」に置き換えたことで、チームの意欲が維持できたこと。もう一つは、役割別ビューを単一のコードベースで実装し、運用コストを抑えられたことです。

ケーススタディ②:金融 ERP プラットフォーム「FinCore」

国内12社が導入する「FinCore」では、勘定系データと店舗オペレーションが分断され、残高照合に毎月大きな時間がかかっていました。プロセス全体を分単位で計測すると、勘定科目の多重コード化がボトルネックだと判明。APIでコード体系を一本化し、明細を自然言語で絞り込めるライブフィルターUIを実装しました。さらに、画面遷移のたびにセッションが切れる問題をSAMLベースのリフレッシュトークン制御で解消。残高照合は50分から7分へ短縮、レポート作表のエラーは月110件から14件へ減りました。決算の早期化が進み、四半期の監査コストは20%削減されています。

ケーススタディ③:医療機関向けスケジューリング SaaS「CareTrack」

300床規模の病院8施設が共同利用する「CareTrack」では、紙メモからの誤入力が常態化し、予約重複が週70件に達していました。受付・看護師・医師・患者窓口の4役割ごとにシステム・アクティビティ図を作成して流れを整理。もっとも大きなストレスは「診療科をまたぐ転院時に患者情報を横断検索できない」点でした。FHIR準拠の患者データAPIを導入し、カルテの重要情報を科を超えて引き継げるスマートハンドオフを設計。受付専用タブレットビューも見直し、入力ステップは14回から5回へ。半年後、予約重複は週70件から8件に、待ち時間の中央値は38分から19分に。口コミ由来のNPSは+27ptとなり、紹介受診も増えました。

B2BサービスのUI/UXデザインにおける注意点と対策

多くの利害関係者が関わるB2Bでは、順番を間違えると議論が空回りします。最初に影響度×熱量の2軸で関係者をマッピングし、どこから合意を取りに行くかを決めておきましょう。たったこれだけで、会議の回数も、プロジェクトの停滞も目に見えて減っていきます。

プロジェクトを前に進めるには、見る人ごとの“物差し”を一枚にまとめるのがいちばん早道です。経営層にはROI、情報システム部門にはSLA、現場には作業時間削減 など、それぞれが自分ごと化できる共通KPIの一枚絵を用意して、定例の場で同じ画面を見ながら話します。そうすると全員が同じ土台でメリットを確認できるので、意思決定が驚くほどスムーズになります。

B2Bは業務ロジックが複雑になりがちだからこそ、初見の画面は必要最小限に留めるのが鉄則です。細かな設定は折りたたみ式で段階的に開けるようにし、ユーザーの“今やりたいこと”を邪魔しないようにする。迷いそうな箇所にはコンテキストヘルプを添え、右側パネルに図入りの解説を常時表示すれば、手を止めずに学べます。結果として、学習コストは自然に下がります。

導入トレーニングは短く、役割に合わせて的確に管理者向け30分、一般ユーザー向け15分を目安にしたロール別オンボーディングを用意し、プロダクトツアーツールチップを組み合わせて“触りながら覚える”流れにします。さらに、オンボーディング直後14日以内に「設定完了」「レポート出力」といった成功行動を達成できた割合をKPIとして追いかけると、立ち上がりの良し悪しがはっきり見えてきます。あわせて、ユーザー同士が気軽に質問できるコミュニティを運用し、自己解決率を高めていけば、サポートコストを抑えながら体験の質を保つことができます。

まとめ

B2B UI/UX デザインの本質は、多様な利害関係者の期待を一つの KPI に束ね、業務効率とユーザー満足度を同時に高めることにあります。インクリメンタルリリースで学習コストを分散し、役割別 UI と非機能要件の UX 化を徹底すれば、導入障壁を下げながら LTV を着実に向上できます。開発手法よりも体験設計手法に先行投資することが、DX 時代に競争を勝ち抜くための最も確実な戦略です。

JOOiでのUI/UXデザイナー案件例

  • 案件例①

  • 案件例②

  • 案件例③

  • 案件例④

いずれも JOOi の審査(通過率5パーセント)に合格したシニアクラスのデザイナーが対象で、要件定義から実装ディレクションまで裁量を持って携わる案件が中心です。詳細な稼働条件やスキルマッチについてはお気軽にお問い合わせください。

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デジタルトランスフォーメーション(DX)は工数のかかる業務システムを改善させ、サブスクリプションモデルが一般化し、SaaS は人事・会計・SFA・生産管理などあらゆる領域で雨後の筍のように登場しています。乗り換えコストが劇的に下がったいま、プロダクト体験そのものが競争力の本丸となり、「b2b ui uxデザイン」が経営課題として浮上しました。

加えて B2B では、情報を集める“選択者”、予算を握る“購買者”、実際に操作する“利用者”が分離しているのが常です。導入フェーズでは情報システム部門、稼働後はカスタマーサクセス、さらには経営企画や内部監査までが関与し、複数の利害が複雑に絡み合います。本稿では、B2B/社内システムの改善事例をベースに、UX デザイナーが現場で実践している設計・運用の勘所を体系的に整理します。

B2BサービスとB2CサービスのUI/UXの違い

B2C サービスでは、ユーザーの感情を直接刺激する楽しさや心地よさが購買行動に直結します。一方 B2B では、「業務における成果」や「業務プロセスにおいてのリスクがないか」が評価対象になります。それでも最終的な価値を決めるのは、日々システムを操作する現場担当者です。彼らが UX に不満を抱けば利用率は急激に落ち、ROI は下がります。B2B プロダクトは「機能が多いほど良い」という単純な評価軸では測れず、組織全体のワークフローにどれだけ自然に溶け込むかという複合的な UX 指標で判断されるのが特徴です。

B2BサービスのUI/UXが抱える制約の問題

B2B プロダクトでは検証期間が長期化しやすく、PoC やトライアルで現場の声を吸い上げるまでに半年以上を要することも珍しくありません。その間に関係者が増え、要件が膨張することで「誰のための UI なのか」が曖昧になるリスクが高まります。また、権限管理や監査ログ、シングルサインオンなどの非機能要件が UX に直結します。部門ごとに業務フローが異なるため、単に表層デザインを統一するだけではかえって混乱を招きます。ロールベースの UI 設計や条件付きレイアウトなど、部門間の差異を吸収するアプローチが欠かせません。

B2Bサービスで発生しやすいUX課題

B2Bの現場で繰り返し起きるUX課題は、大きく3つに集約できます。まず、価値の伝わらなさです。導入前後のKPIがきちんと計測・共有されず、投資の効果を経営層が実感できない。これでは良い改善も長続きしません。次に、操作の複雑化です。開発者の都合で組まれたワークフローが現場の実情と噛み合わず、気づけばExcelや紙に逆戻りしてしまう。最後は、運用の属人化です。初期のオンボーディングで止まり、継続学習の設計がないまま担当が交代するたびに問い合わせが膨れ上がる。-どれも“プロダクトが現場の毎日とつながっていない”ときに起きる症状です。

管理画面が UX のボトルネックになる理由

設定ミスひとつが全社の業務停止につながるのが管理画面です。だからこそ、安心感と操作効率の両立が欠かせません。ワークフローでの誤操作防止、二段階確認、インラインバリデーションは前提として備えたいところです。そのうえで、「いつ・誰が・何を・どう変えたか」を即座に追える履歴タイムラインを用意しておくと、原因特定から復旧までの時間がぐっと短くなります。状態の可視化とログ追跡がかみ合えば、エラーの影響範囲を瞬時に見渡せるようになり、システムへの信頼度は目に見えて高まります。

B2BサービスにおけるUI/UXデザインの重要性

B2B企業がUXに取り組み始めた背景

背景には3つの構造変化があります。まず、SaaS市場で顧客獲得コスト(CAC)が高止まりしている現状。高いコストで連れてきたお客様をUXの悪さで離脱させてしまっては投資を回収できません。次に、Product‑Led Growth(PLG)へのシフトです。無償トライアルやフリーミアムから有償へ移行していただく決め手は、結局オンボーディングの心地よさに集約されます。そして、リモートワークが常態化し、対面の手厚いフォローが難しくなったこと。プロダクトそのものが主要な顧客接点になった今、UXは営業やCSの延長ではなく、事業の基盤そのものだと言えます。

業務効率とユーザー満足度を両立させるポイント

使いやすさと業務効率はトレードオフではありません。鍵は役割別UIプログレッシブ・ディスクロージャ(段階的開示)の設計です。管理者には全体を俯瞰できるダッシュボードを、担当者には今日やるべきことが自然に並ぶ時系列タスクビューを。それぞれの視点に合わせて見せ方を切り替えるだけで、迷いが減ります。さらに、利用頻度の高い操作を学習して配置を微調整するデータドリブンなUIを組み合わせると、「使うほど自分に馴染む」感覚が生まれ、定着率が伸びていきます。

顧客関係性構築におけるUXの役割

かつてB2Bは「最後は営業の信頼関係」で決まると言われました。今もその重要性は変わりませんが、初回体験の段階ではプロダクト自体が“無言の営業担当”になります。説明書よりも、実際に触ったときの“つまずかなさ”や“ていねいさ”のほうが、価値提案としてずっと強い説得力を持ちます。

業務効率化とユーザー満足度の両立

まとめると、役割別UI+段階的開示+行動データにもとづく配置最適化という三点セットを回せば、学習コストを抑えながら処理時間を短縮でき、同時にNPSの向上も狙えます。効率と満足を両立させる王道の組み合わせです。

B2BサービスのUI/UXデザイン設計プロセス

設計は5つの段階で進めます。

戦略では、経営層と現場の双方が納得できるKGIとKPIを定義します。

要件では、ペルソナとユーザージャーニーをスプリントごとに更新し、MoSCoW法で優先度を確定。

構造では、サービスブループリントでバックエンド連携を見える化し、詰まりやすい箇所を洗い出します。

骨格では、Figmaで業務コンポーネント・ライブラリを整備し、再利用可能な部品として合意をとります。

表層では、WCAG 2.2 AAに準拠したコントラスト比やフォントサイズを設定し、ブランドガイドと矛盾がないかを確認します。段階を飛ばさずに歩を進めることが、後戻りコストを最小化する最短ルートです。

B2BサービスのUI/UXデザイン成功事例

ケーススタディ①:製造業向け IoT プラットフォーム「ProdFlow」

国内外23工場・4,800名が使う「ProdFlow」では、センサーの異常アラートが1日300件も届き、現場は“アラーム疲れ”に陥っていました。チームは12回の現場シャドーイングで実態を見に行き、経営層にはジョブ理論の観点でヒアリング。求められていたのは、各工場を横並びで比較できるランキングでした。アラートは重要度で3段階に整理し、経営向けのKPIビューと現場向けのリアルタイムビューを分離。しきい値やシフトをGUIで変えられるセルフ設定ウィザードも用意しました。結果、不要通知は70%減、問い合わせ工数は月120時間から45時間へ。可視化機能の利用率は18%から64%へ跳ね上がりました。学びは2つ。KPIを「問い合わせ削減」ではなく「アラートの質の向上」に置き換えたことで、チームの意欲が維持できたこと。もう一つは、役割別ビューを単一のコードベースで実装し、運用コストを抑えられたことです。

ケーススタディ②:金融 ERP プラットフォーム「FinCore」

国内12社が導入する「FinCore」では、勘定系データと店舗オペレーションが分断され、残高照合に毎月大きな時間がかかっていました。プロセス全体を分単位で計測すると、勘定科目の多重コード化がボトルネックだと判明。APIでコード体系を一本化し、明細を自然言語で絞り込めるライブフィルターUIを実装しました。さらに、画面遷移のたびにセッションが切れる問題をSAMLベースのリフレッシュトークン制御で解消。残高照合は50分から7分へ短縮、レポート作表のエラーは月110件から14件へ減りました。決算の早期化が進み、四半期の監査コストは20%削減されています。

ケーススタディ③:医療機関向けスケジューリング SaaS「CareTrack」

300床規模の病院8施設が共同利用する「CareTrack」では、紙メモからの誤入力が常態化し、予約重複が週70件に達していました。受付・看護師・医師・患者窓口の4役割ごとにシステム・アクティビティ図を作成して流れを整理。もっとも大きなストレスは「診療科をまたぐ転院時に患者情報を横断検索できない」点でした。FHIR準拠の患者データAPIを導入し、カルテの重要情報を科を超えて引き継げるスマートハンドオフを設計。受付専用タブレットビューも見直し、入力ステップは14回から5回へ。半年後、予約重複は週70件から8件に、待ち時間の中央値は38分から19分に。口コミ由来のNPSは+27ptとなり、紹介受診も増えました。

B2BサービスのUI/UXデザインにおける注意点と対策

多くの利害関係者が関わるB2Bでは、順番を間違えると議論が空回りします。最初に影響度×熱量の2軸で関係者をマッピングし、どこから合意を取りに行くかを決めておきましょう。たったこれだけで、会議の回数も、プロジェクトの停滞も目に見えて減っていきます。

プロジェクトを前に進めるには、見る人ごとの“物差し”を一枚にまとめるのがいちばん早道です。経営層にはROI、情報システム部門にはSLA、現場には作業時間削減 など、それぞれが自分ごと化できる共通KPIの一枚絵を用意して、定例の場で同じ画面を見ながら話します。そうすると全員が同じ土台でメリットを確認できるので、意思決定が驚くほどスムーズになります。

B2Bは業務ロジックが複雑になりがちだからこそ、初見の画面は必要最小限に留めるのが鉄則です。細かな設定は折りたたみ式で段階的に開けるようにし、ユーザーの“今やりたいこと”を邪魔しないようにする。迷いそうな箇所にはコンテキストヘルプを添え、右側パネルに図入りの解説を常時表示すれば、手を止めずに学べます。結果として、学習コストは自然に下がります。

導入トレーニングは短く、役割に合わせて的確に管理者向け30分、一般ユーザー向け15分を目安にしたロール別オンボーディングを用意し、プロダクトツアーツールチップを組み合わせて“触りながら覚える”流れにします。さらに、オンボーディング直後14日以内に「設定完了」「レポート出力」といった成功行動を達成できた割合をKPIとして追いかけると、立ち上がりの良し悪しがはっきり見えてきます。あわせて、ユーザー同士が気軽に質問できるコミュニティを運用し、自己解決率を高めていけば、サポートコストを抑えながら体験の質を保つことができます。

まとめ

B2B UI/UX デザインの本質は、多様な利害関係者の期待を一つの KPI に束ね、業務効率とユーザー満足度を同時に高めることにあります。インクリメンタルリリースで学習コストを分散し、役割別 UI と非機能要件の UX 化を徹底すれば、導入障壁を下げながら LTV を着実に向上できます。開発手法よりも体験設計手法に先行投資することが、DX 時代に競争を勝ち抜くための最も確実な戦略です。

JOOiでのUI/UXデザイナー案件例

  • 案件例①

  • 案件例②

  • 案件例③

  • 案件例④

いずれも JOOi の審査(通過率5パーセント)に合格したシニアクラスのデザイナーが対象で、要件定義から実装ディレクションまで裁量を持って携わる案件が中心です。詳細な稼働条件やスキルマッチについてはお気軽にお問い合わせください。

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2024.01.01

デジタルトランスフォーメーション(DX)は工数のかかる業務システムを改善させ、サブスクリプションモデルが一般化し、SaaS は人事・会計・SFA・生産管理などあらゆる領域で雨後の筍のように登場しています。乗り換えコストが劇的に下がったいま、プロダクト体験そのものが競争力の本丸となり、「b2b ui uxデザイン」が経営課題として浮上しました。

加えて B2B では、情報を集める“選択者”、予算を握る“購買者”、実際に操作する“利用者”が分離しているのが常です。導入フェーズでは情報システム部門、稼働後はカスタマーサクセス、さらには経営企画や内部監査までが関与し、複数の利害が複雑に絡み合います。本稿では、B2B/社内システムの改善事例をベースに、UX デザイナーが現場で実践している設計・運用の勘所を体系的に整理します。

B2BサービスとB2CサービスのUI/UXの違い

B2C サービスでは、ユーザーの感情を直接刺激する楽しさや心地よさが購買行動に直結します。一方 B2B では、「業務における成果」や「業務プロセスにおいてのリスクがないか」が評価対象になります。それでも最終的な価値を決めるのは、日々システムを操作する現場担当者です。彼らが UX に不満を抱けば利用率は急激に落ち、ROI は下がります。B2B プロダクトは「機能が多いほど良い」という単純な評価軸では測れず、組織全体のワークフローにどれだけ自然に溶け込むかという複合的な UX 指標で判断されるのが特徴です。

B2BサービスのUI/UXが抱える制約の問題

B2B プロダクトでは検証期間が長期化しやすく、PoC やトライアルで現場の声を吸い上げるまでに半年以上を要することも珍しくありません。その間に関係者が増え、要件が膨張することで「誰のための UI なのか」が曖昧になるリスクが高まります。また、権限管理や監査ログ、シングルサインオンなどの非機能要件が UX に直結します。部門ごとに業務フローが異なるため、単に表層デザインを統一するだけではかえって混乱を招きます。ロールベースの UI 設計や条件付きレイアウトなど、部門間の差異を吸収するアプローチが欠かせません。

B2Bサービスで発生しやすいUX課題

B2Bの現場で繰り返し起きるUX課題は、大きく3つに集約できます。まず、価値の伝わらなさです。導入前後のKPIがきちんと計測・共有されず、投資の効果を経営層が実感できない。これでは良い改善も長続きしません。次に、操作の複雑化です。開発者の都合で組まれたワークフローが現場の実情と噛み合わず、気づけばExcelや紙に逆戻りしてしまう。最後は、運用の属人化です。初期のオンボーディングで止まり、継続学習の設計がないまま担当が交代するたびに問い合わせが膨れ上がる。-どれも“プロダクトが現場の毎日とつながっていない”ときに起きる症状です。

管理画面が UX のボトルネックになる理由

設定ミスひとつが全社の業務停止につながるのが管理画面です。だからこそ、安心感と操作効率の両立が欠かせません。ワークフローでの誤操作防止、二段階確認、インラインバリデーションは前提として備えたいところです。そのうえで、「いつ・誰が・何を・どう変えたか」を即座に追える履歴タイムラインを用意しておくと、原因特定から復旧までの時間がぐっと短くなります。状態の可視化とログ追跡がかみ合えば、エラーの影響範囲を瞬時に見渡せるようになり、システムへの信頼度は目に見えて高まります。

B2BサービスにおけるUI/UXデザインの重要性

B2B企業がUXに取り組み始めた背景

背景には3つの構造変化があります。まず、SaaS市場で顧客獲得コスト(CAC)が高止まりしている現状。高いコストで連れてきたお客様をUXの悪さで離脱させてしまっては投資を回収できません。次に、Product‑Led Growth(PLG)へのシフトです。無償トライアルやフリーミアムから有償へ移行していただく決め手は、結局オンボーディングの心地よさに集約されます。そして、リモートワークが常態化し、対面の手厚いフォローが難しくなったこと。プロダクトそのものが主要な顧客接点になった今、UXは営業やCSの延長ではなく、事業の基盤そのものだと言えます。

業務効率とユーザー満足度を両立させるポイント

使いやすさと業務効率はトレードオフではありません。鍵は役割別UIプログレッシブ・ディスクロージャ(段階的開示)の設計です。管理者には全体を俯瞰できるダッシュボードを、担当者には今日やるべきことが自然に並ぶ時系列タスクビューを。それぞれの視点に合わせて見せ方を切り替えるだけで、迷いが減ります。さらに、利用頻度の高い操作を学習して配置を微調整するデータドリブンなUIを組み合わせると、「使うほど自分に馴染む」感覚が生まれ、定着率が伸びていきます。

顧客関係性構築におけるUXの役割

かつてB2Bは「最後は営業の信頼関係」で決まると言われました。今もその重要性は変わりませんが、初回体験の段階ではプロダクト自体が“無言の営業担当”になります。説明書よりも、実際に触ったときの“つまずかなさ”や“ていねいさ”のほうが、価値提案としてずっと強い説得力を持ちます。

業務効率化とユーザー満足度の両立

まとめると、役割別UI+段階的開示+行動データにもとづく配置最適化という三点セットを回せば、学習コストを抑えながら処理時間を短縮でき、同時にNPSの向上も狙えます。効率と満足を両立させる王道の組み合わせです。

B2BサービスのUI/UXデザイン設計プロセス

設計は5つの段階で進めます。

戦略では、経営層と現場の双方が納得できるKGIとKPIを定義します。

要件では、ペルソナとユーザージャーニーをスプリントごとに更新し、MoSCoW法で優先度を確定。

構造では、サービスブループリントでバックエンド連携を見える化し、詰まりやすい箇所を洗い出します。

骨格では、Figmaで業務コンポーネント・ライブラリを整備し、再利用可能な部品として合意をとります。

表層では、WCAG 2.2 AAに準拠したコントラスト比やフォントサイズを設定し、ブランドガイドと矛盾がないかを確認します。段階を飛ばさずに歩を進めることが、後戻りコストを最小化する最短ルートです。

B2BサービスのUI/UXデザイン成功事例

ケーススタディ①:製造業向け IoT プラットフォーム「ProdFlow」

国内外23工場・4,800名が使う「ProdFlow」では、センサーの異常アラートが1日300件も届き、現場は“アラーム疲れ”に陥っていました。チームは12回の現場シャドーイングで実態を見に行き、経営層にはジョブ理論の観点でヒアリング。求められていたのは、各工場を横並びで比較できるランキングでした。アラートは重要度で3段階に整理し、経営向けのKPIビューと現場向けのリアルタイムビューを分離。しきい値やシフトをGUIで変えられるセルフ設定ウィザードも用意しました。結果、不要通知は70%減、問い合わせ工数は月120時間から45時間へ。可視化機能の利用率は18%から64%へ跳ね上がりました。学びは2つ。KPIを「問い合わせ削減」ではなく「アラートの質の向上」に置き換えたことで、チームの意欲が維持できたこと。もう一つは、役割別ビューを単一のコードベースで実装し、運用コストを抑えられたことです。

ケーススタディ②:金融 ERP プラットフォーム「FinCore」

国内12社が導入する「FinCore」では、勘定系データと店舗オペレーションが分断され、残高照合に毎月大きな時間がかかっていました。プロセス全体を分単位で計測すると、勘定科目の多重コード化がボトルネックだと判明。APIでコード体系を一本化し、明細を自然言語で絞り込めるライブフィルターUIを実装しました。さらに、画面遷移のたびにセッションが切れる問題をSAMLベースのリフレッシュトークン制御で解消。残高照合は50分から7分へ短縮、レポート作表のエラーは月110件から14件へ減りました。決算の早期化が進み、四半期の監査コストは20%削減されています。

ケーススタディ③:医療機関向けスケジューリング SaaS「CareTrack」

300床規模の病院8施設が共同利用する「CareTrack」では、紙メモからの誤入力が常態化し、予約重複が週70件に達していました。受付・看護師・医師・患者窓口の4役割ごとにシステム・アクティビティ図を作成して流れを整理。もっとも大きなストレスは「診療科をまたぐ転院時に患者情報を横断検索できない」点でした。FHIR準拠の患者データAPIを導入し、カルテの重要情報を科を超えて引き継げるスマートハンドオフを設計。受付専用タブレットビューも見直し、入力ステップは14回から5回へ。半年後、予約重複は週70件から8件に、待ち時間の中央値は38分から19分に。口コミ由来のNPSは+27ptとなり、紹介受診も増えました。

B2BサービスのUI/UXデザインにおける注意点と対策

多くの利害関係者が関わるB2Bでは、順番を間違えると議論が空回りします。最初に影響度×熱量の2軸で関係者をマッピングし、どこから合意を取りに行くかを決めておきましょう。たったこれだけで、会議の回数も、プロジェクトの停滞も目に見えて減っていきます。

プロジェクトを前に進めるには、見る人ごとの“物差し”を一枚にまとめるのがいちばん早道です。経営層にはROI、情報システム部門にはSLA、現場には作業時間削減 など、それぞれが自分ごと化できる共通KPIの一枚絵を用意して、定例の場で同じ画面を見ながら話します。そうすると全員が同じ土台でメリットを確認できるので、意思決定が驚くほどスムーズになります。

B2Bは業務ロジックが複雑になりがちだからこそ、初見の画面は必要最小限に留めるのが鉄則です。細かな設定は折りたたみ式で段階的に開けるようにし、ユーザーの“今やりたいこと”を邪魔しないようにする。迷いそうな箇所にはコンテキストヘルプを添え、右側パネルに図入りの解説を常時表示すれば、手を止めずに学べます。結果として、学習コストは自然に下がります。

導入トレーニングは短く、役割に合わせて的確に管理者向け30分、一般ユーザー向け15分を目安にしたロール別オンボーディングを用意し、プロダクトツアーツールチップを組み合わせて“触りながら覚える”流れにします。さらに、オンボーディング直後14日以内に「設定完了」「レポート出力」といった成功行動を達成できた割合をKPIとして追いかけると、立ち上がりの良し悪しがはっきり見えてきます。あわせて、ユーザー同士が気軽に質問できるコミュニティを運用し、自己解決率を高めていけば、サポートコストを抑えながら体験の質を保つことができます。

まとめ

B2B UI/UX デザインの本質は、多様な利害関係者の期待を一つの KPI に束ね、業務効率とユーザー満足度を同時に高めることにあります。インクリメンタルリリースで学習コストを分散し、役割別 UI と非機能要件の UX 化を徹底すれば、導入障壁を下げながら LTV を着実に向上できます。開発手法よりも体験設計手法に先行投資することが、DX 時代に競争を勝ち抜くための最も確実な戦略です。

JOOiでのUI/UXデザイナー案件例

  • 案件例①

  • 案件例②

  • 案件例③

  • 案件例④

いずれも JOOi の審査(通過率5パーセント)に合格したシニアクラスのデザイナーが対象で、要件定義から実装ディレクションまで裁量を持って携わる案件が中心です。詳細な稼働条件やスキルマッチについてはお気軽にお問い合わせください。

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