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デザインシステムとは?基本概念から導入メリット・構築方法まで徹底解説
投稿日:
2024.01.01
プロダクトが成長すると、UIはその都度追加され、気づけば似ているようで微妙に違うボタンやトーンが並んでしまうことがあります。スピードと一貫性を両立するために必要なのが「デザインシステム」です。本記事では、基礎から構成要素、導入メリット、構築・運用方法までを体系的に解説していきます。読み終えるころには、次の四半期で取り組むべき一歩が見えてくるはずです。ぜひ最後まで読んでみてください。
デザインシステムとは何か?
デザインシステムは組織全体で意思決定を揃え、プロダクト開発を加速させるためのフレームワークです。「見た目を揃えるための仕組み」だけではありません。スタイルやコンポーネント、コード、ドキュメント、運用ルールをまとめ、事業の成果と結びつけていきます。
デザインシステムの定義と目的
デザインシステムとは「ブランド体験を再現可能にするための規則や資産、プロセスの集合体」です。色やタイポグラフィ、余白などをまとめるデザイントークン(デザインの基本単位)、再利用可能なUIコンポーネント、UX課題に対応するパターン、利用ルールを示すドキュメント、そして改善を続けるための運用プロセスで構成されます。
目的は大きく3つあります。
①UIを一貫させること
②デザインや開発の効率化
③ブランド価値を高めること です。
さらに、アクセシビリティ(誰でも使いやすい設計)やパフォーマンスも最初から意識することで、後から大きな改修をするリスクを減らすことができます。
スタイルガイドやパターンライブラリとの違い
スタイルガイドは色や文字のルールをまとめた“見た目の辞書”であり、パターンライブラリはよく使うUIやUXの解決策を集めた“便利帳”のようなものです。
一方、デザインシステムは「なぜそのデザインになっているのか」という根拠や、変更のルールまで含んでいます。たとえば「なぜPrimaryカラーが#1463FFなのか」を、色覚多様性やコントラスト比といった観点まで説明し、Figmaやコードに自動的に反映させる仕組みを持ちます。単なる要素集ではなく「運用できる仕組み」である点が大きな違いです。
なぜ今注目されているのか
近年は複数デバイス・複数プロダクトを並行して開発するのが当たり前になり、スピードと品質を同時に求められています。その中で「一度決めたルールを速やかに全体へ反映できる仕組み」が必須になってきました。
また、デザイナーの利用ツールがFigmaに収斂してきたことも追い風です。JOOiのアンケートでも、Figma実務経験が75.6%、Web UI経験者は72.7%にのぼり、SaaSや金融など要件の厳しい領域で活躍する人材も多いことがわかっています。つまり、標準化しやすい環境が整っているのです。
さらに、AI活用への関心も高まっています。JOOi主催のイベントアンケートでは7割以上がAI活用テーマに興味ありと回答し、レビューや生成の自動化に期待する声も多くありました。デザインシステムはこうしたAI活用の土台にもなります。
ここまでで「なぜ必要なのか」を整理しました。次は「何でできているのか」を詳しく見ていきます。
デザインシステムの構成要素
デザインシステムは下位から上位に積み上げる仕組みで考えるとわかりやすいです。基礎となるトークンから始まり、コンポーネント、パターン、そして運用ドキュメントへとつながっていきます。
デザイントークン
色、文字サイズや行間、余白、影、アニメーションなどを「デザイントークン」という最小単位で定義します。これらをJSONやCSS Variablesなどの形式で管理することで、全プロダクトに一貫して適用できます。
たとえば「Primaryボタンの色」を「#1463FF」ではなく「Primary.Color」と定義しておけば、ブランドカラーを変えたときに一括で変更が反映されます。トークンを役割ベースで命名しておくと、変更や拡張に強くなります。
UIコンポーネント
ボタン、フォーム、ナビゲーション、カードなど、再利用可能な部品を「UIコンポーネント」として設計します。コンポーネントはアクセシビリティを考慮し、キーボード操作やスクリーンリーダーでの利用もできるようにします。
また、Figmaのコンポーネントと実装(React/Vueなど)を双方向に結びつけることで、デザインと開発の差分を減らすことができます。Storybookなどのツールを使えば、実装例をドキュメント化しながらテストも並行できます。
パターン・テンプレート
「ログイン」「決済」「エラーメッセージ」「エンプティステート」など、ユーザーが直面する典型的なシナリオをまとめたものがパターンやテンプレートです。
単なる部品の組み合わせではなく「どうすれば使いやすいのか」という解決方法を標準化する役割を持っています。これによりUX全体の品質が一定に保たれ、ユーザーは安心して操作できます。
ドキュメンテーションとガイドライン
最後に欠かせないのがドキュメントです。使い方のルールに加えて「なぜそうするのか」という背景を記録しておくことで、デザイナーだけでなくエンジニアやプロダクトマネージャーも理解できます。
具体例、禁止例、実装コード、アクセシビリティ要件などをわかりやすくまとめることで、誰が見ても同じ解釈ができる状態を作れます。
構成要素がわかったところで、導入するとどんな効果があるのかを整理していきます。
デザインシステム導入のメリット
デザインシステムの導入は「見た目を揃えるため」だけではありません。事業成果や開発スピードにも直結します。ここでは、導入によって得られる3つの主要なメリットを見ていきます。
UIの一貫性向上
ユーザーはアプリやWebサイトの中で、一貫したデザインに触れることで安心感を得ます。逆に似て非なるボタンや入力フォームが混在していると、戸惑いが生じ、離脱率にもつながります。デザインシステムを導入することで、すべてのプロダクトやデバイスで同じルールが適用され、ユーザーは迷わず操作できるようになります。とくに金融や医療のように、ミスが大きなリスクに直結する分野では、その価値はさらに高まります。
開発・デザイン効率の向上
再利用できるパーツがそろっていれば、新しい機能を作るときもゼロからデザインする必要はありません。結果として作業時間が短縮され、レビューや修正も効率的になります。特にJOOiのデザイナー調査では、Figmaの利用経験が75.6%と多く、共通の環境でのコラボレーションが前提になっていることがわかります。つまり、標準化されたデザインシステムは現場にスムーズに浸透しやすいのです。
ブランド価値の強化
統一されたデザインは、ユーザーの記憶にも残りやすくなります。色や文字だけでなく、モーションやマイクロコピーなど細部まで一貫していると、ブランドとしての存在感が強まり、信頼性も向上します。広告やキャンペーンに頼らなくても、日常的な利用体験そのものがブランディングにつながるのです。
導入の効果を理解したところで、次は実際の構築ステップを確認していきましょう。
デザインシステム構築のステップ
デザインシステムは一度に完成させるものではありません。段階的に整え、少しずつ適用範囲を広げていくことが成功のポイントです。
現状分析と要件定義
まずは現状のデザインを棚卸しします。色やフォントのバリエーション、似ているけれど微妙に異なるUI部品を洗い出し、どこに課題があるかを把握します。次に、何を解決したいのか、どのKPIに影響を与えるのかを明確にして、システム化の目的を定義します。
スタイルガイド・トークンの策定
ブランドカラーやフォントサイズ、余白の基準などを「デザイントークン」として定義します。これにより、全てのプロダクトで共通のルールを使えるようになります。ここでアクセシビリティや多言語対応も意識しておくと、後から修正するコストを抑えられます。
UIコンポーネントの設計
ボタンや入力フォームなど主要なUI部品を定義し、再利用できるように設計します。状態やサイズ、エラーメッセージなども含めて整理し、Storybookなどでテストやドキュメントを並行して整備すると効率的です。
ドキュメント作成と共有
作ったルールや部品を、誰でも理解できるようにまとめます。デザイナーだけでなく、エンジニアやプロダクトマネージャーにもわかりやすい形式で、利用例や禁止例を添えることが大切です。検索や参照がしやすい環境を用意して、日常的にアクセスできるようにします。
運用・改善サイクルの確立
一度作って終わりではなく、継続的に改善する仕組みをつくります。新しい要件が出たときにどう追加するのか、変更をどうリリースするのかをルール化しておくと混乱を防げます。JOOiのように外部のハイスキルデザイナーをプロジェクトにアサインすることで、リソース不足を補いながら運用する方法も有効です【turn0file1】。
続いて、導入の際に陥りやすい落とし穴と、その回避ポイントを見ていきます。
デザインシステムを作るときに気をつけるべきこと
成功の鍵は「使いやすさ」と「持続性」です。ここでは3つの注意点を挙げます。
過剰なルール設定を避ける
すべてを厳密に規定すると、逆に使いづらくなってしまいます。禁止事項はユーザーに大きな影響を与えるものに絞り、基本は原則と判断基準を示す程度にとどめるのが良いでしょう。
全員が使いやすいドキュメント設計
デザイナーだけでなく、エンジニアやPM、CS担当者も利用することを前提にします。「なぜそうするのか」から始まり、「どう使うのか」「具体的なコード例」までを段階的に書いておくと、誰にとってもわかりやすいドキュメントになります。
小規模から始めて段階的に拡張
初めから全てを揃える必要はありません。まずはボタンやフォームなど影響範囲の大きい部品から着手し、徐々に適用範囲を広げていく方が定着しやすいです。
——次に、実際の企業での事例を通じて、導入の具体的なイメージをつかみましょう。
導入事例とベストプラクティス
大規模サービスでの事例
大手企業では、複数の事業部や異なる技術スタックを横断してデザインシステムを導入しています。トークンや基幹コンポーネントだけを共通化し、事業ごとの拡張は別パッケージで管理するなど、柔軟性と統一性を両立させる工夫が見られます。
スタートアップでの活用例
人数が限られているスタートアップでは、早期からデザインシステムを導入することでスケーラビリティを確保しています。まずはデザイントークンと基本コンポーネントを整え、素早く試作と実装を繰り返せる基盤をつくるのが特徴です。
海外企業の先進事例
GoogleやAtlassianといった海外企業の事例では、アクセシビリティや国際化を前提にしたデザインシステムが一般的です。また、自動生成や多テーマ展開を取り入れることで、効率的な運用を実現しています。
——最後に、運用の課題とこれからの展望について整理していきます。
デザインシステム運用の課題と今後の展望
運用コストとリソース確保
デザインシステムは作るよりも「維持すること」のほうが大変です。専任の人員を確保するか、外部のデザイナーをスポットで活用するなど、継続的に運用できる体制づくりが求められます【turn0file1】。
ツールや技術の進化への適応
FigmaやAIツールなど、デザイン環境は急速に進化しています。新しい機能に合わせてシステムを更新し続けることで、現場に合った仕組みを保つことができます。JOOiのアンケート結果からも、Figmaを中心にした実務経験が多数派となっており【turn0file2】、ツール進化に合わせた運用が欠かせません。
今後の自動化とAI活用
AIによるデザイン生成やレビュー自動化は、今後ますます一般的になっていきます。実際、JOOiのイベント調査でも7割以上がAI活用に関心を示しています。デザインシステムにデータやルールを蓄積しておけば、AIの力を活かして効率と品質を同時に高めることができます。
まとめ
デザインシステムは「統一感を保つための仕組み」を超えて、事業のスピードや品質を引き上げる戦略的な基盤です。小さなステップから始め、効果を測りながら拡張していくことで、組織に根付かせることができます。外部の専門人材やAIも取り入れながら、次世代の運用へと進化させることが可能です。これからのプロダクト開発に欠かせない投資として、デザインシステムの導入をぜひ検討してみてください。
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デザインシステムとは何か?
デザインシステムは組織全体で意思決定を揃え、プロダクト開発を加速させるためのフレームワークです。「見た目を揃えるための仕組み」だけではありません。スタイルやコンポーネント、コード、ドキュメント、運用ルールをまとめ、事業の成果と結びつけていきます。
デザインシステムの定義と目的
デザインシステムとは「ブランド体験を再現可能にするための規則や資産、プロセスの集合体」です。色やタイポグラフィ、余白などをまとめるデザイントークン(デザインの基本単位)、再利用可能なUIコンポーネント、UX課題に対応するパターン、利用ルールを示すドキュメント、そして改善を続けるための運用プロセスで構成されます。
目的は大きく3つあります。
①UIを一貫させること
②デザインや開発の効率化
③ブランド価値を高めること です。
さらに、アクセシビリティ(誰でも使いやすい設計)やパフォーマンスも最初から意識することで、後から大きな改修をするリスクを減らすことができます。
スタイルガイドやパターンライブラリとの違い
スタイルガイドは色や文字のルールをまとめた“見た目の辞書”であり、パターンライブラリはよく使うUIやUXの解決策を集めた“便利帳”のようなものです。
一方、デザインシステムは「なぜそのデザインになっているのか」という根拠や、変更のルールまで含んでいます。たとえば「なぜPrimaryカラーが#1463FFなのか」を、色覚多様性やコントラスト比といった観点まで説明し、Figmaやコードに自動的に反映させる仕組みを持ちます。単なる要素集ではなく「運用できる仕組み」である点が大きな違いです。
なぜ今注目されているのか
近年は複数デバイス・複数プロダクトを並行して開発するのが当たり前になり、スピードと品質を同時に求められています。その中で「一度決めたルールを速やかに全体へ反映できる仕組み」が必須になってきました。
また、デザイナーの利用ツールがFigmaに収斂してきたことも追い風です。JOOiのアンケートでも、Figma実務経験が75.6%、Web UI経験者は72.7%にのぼり、SaaSや金融など要件の厳しい領域で活躍する人材も多いことがわかっています。つまり、標準化しやすい環境が整っているのです。
さらに、AI活用への関心も高まっています。JOOi主催のイベントアンケートでは7割以上がAI活用テーマに興味ありと回答し、レビューや生成の自動化に期待する声も多くありました。デザインシステムはこうしたAI活用の土台にもなります。
ここまでで「なぜ必要なのか」を整理しました。次は「何でできているのか」を詳しく見ていきます。
デザインシステムの構成要素
デザインシステムは下位から上位に積み上げる仕組みで考えるとわかりやすいです。基礎となるトークンから始まり、コンポーネント、パターン、そして運用ドキュメントへとつながっていきます。
デザイントークン
色、文字サイズや行間、余白、影、アニメーションなどを「デザイントークン」という最小単位で定義します。これらをJSONやCSS Variablesなどの形式で管理することで、全プロダクトに一貫して適用できます。
たとえば「Primaryボタンの色」を「#1463FF」ではなく「Primary.Color」と定義しておけば、ブランドカラーを変えたときに一括で変更が反映されます。トークンを役割ベースで命名しておくと、変更や拡張に強くなります。
UIコンポーネント
ボタン、フォーム、ナビゲーション、カードなど、再利用可能な部品を「UIコンポーネント」として設計します。コンポーネントはアクセシビリティを考慮し、キーボード操作やスクリーンリーダーでの利用もできるようにします。
また、Figmaのコンポーネントと実装(React/Vueなど)を双方向に結びつけることで、デザインと開発の差分を減らすことができます。Storybookなどのツールを使えば、実装例をドキュメント化しながらテストも並行できます。
パターン・テンプレート
「ログイン」「決済」「エラーメッセージ」「エンプティステート」など、ユーザーが直面する典型的なシナリオをまとめたものがパターンやテンプレートです。
単なる部品の組み合わせではなく「どうすれば使いやすいのか」という解決方法を標準化する役割を持っています。これによりUX全体の品質が一定に保たれ、ユーザーは安心して操作できます。
ドキュメンテーションとガイドライン
最後に欠かせないのがドキュメントです。使い方のルールに加えて「なぜそうするのか」という背景を記録しておくことで、デザイナーだけでなくエンジニアやプロダクトマネージャーも理解できます。
具体例、禁止例、実装コード、アクセシビリティ要件などをわかりやすくまとめることで、誰が見ても同じ解釈ができる状態を作れます。
構成要素がわかったところで、導入するとどんな効果があるのかを整理していきます。
デザインシステム導入のメリット
デザインシステムの導入は「見た目を揃えるため」だけではありません。事業成果や開発スピードにも直結します。ここでは、導入によって得られる3つの主要なメリットを見ていきます。
UIの一貫性向上
ユーザーはアプリやWebサイトの中で、一貫したデザインに触れることで安心感を得ます。逆に似て非なるボタンや入力フォームが混在していると、戸惑いが生じ、離脱率にもつながります。デザインシステムを導入することで、すべてのプロダクトやデバイスで同じルールが適用され、ユーザーは迷わず操作できるようになります。とくに金融や医療のように、ミスが大きなリスクに直結する分野では、その価値はさらに高まります。
開発・デザイン効率の向上
再利用できるパーツがそろっていれば、新しい機能を作るときもゼロからデザインする必要はありません。結果として作業時間が短縮され、レビューや修正も効率的になります。特にJOOiのデザイナー調査では、Figmaの利用経験が75.6%と多く、共通の環境でのコラボレーションが前提になっていることがわかります。つまり、標準化されたデザインシステムは現場にスムーズに浸透しやすいのです。
ブランド価値の強化
統一されたデザインは、ユーザーの記憶にも残りやすくなります。色や文字だけでなく、モーションやマイクロコピーなど細部まで一貫していると、ブランドとしての存在感が強まり、信頼性も向上します。広告やキャンペーンに頼らなくても、日常的な利用体験そのものがブランディングにつながるのです。
導入の効果を理解したところで、次は実際の構築ステップを確認していきましょう。
デザインシステム構築のステップ
デザインシステムは一度に完成させるものではありません。段階的に整え、少しずつ適用範囲を広げていくことが成功のポイントです。
現状分析と要件定義
まずは現状のデザインを棚卸しします。色やフォントのバリエーション、似ているけれど微妙に異なるUI部品を洗い出し、どこに課題があるかを把握します。次に、何を解決したいのか、どのKPIに影響を与えるのかを明確にして、システム化の目的を定義します。
スタイルガイド・トークンの策定
ブランドカラーやフォントサイズ、余白の基準などを「デザイントークン」として定義します。これにより、全てのプロダクトで共通のルールを使えるようになります。ここでアクセシビリティや多言語対応も意識しておくと、後から修正するコストを抑えられます。
UIコンポーネントの設計
ボタンや入力フォームなど主要なUI部品を定義し、再利用できるように設計します。状態やサイズ、エラーメッセージなども含めて整理し、Storybookなどでテストやドキュメントを並行して整備すると効率的です。
ドキュメント作成と共有
作ったルールや部品を、誰でも理解できるようにまとめます。デザイナーだけでなく、エンジニアやプロダクトマネージャーにもわかりやすい形式で、利用例や禁止例を添えることが大切です。検索や参照がしやすい環境を用意して、日常的にアクセスできるようにします。
運用・改善サイクルの確立
一度作って終わりではなく、継続的に改善する仕組みをつくります。新しい要件が出たときにどう追加するのか、変更をどうリリースするのかをルール化しておくと混乱を防げます。JOOiのように外部のハイスキルデザイナーをプロジェクトにアサインすることで、リソース不足を補いながら運用する方法も有効です【turn0file1】。
続いて、導入の際に陥りやすい落とし穴と、その回避ポイントを見ていきます。
デザインシステムを作るときに気をつけるべきこと
成功の鍵は「使いやすさ」と「持続性」です。ここでは3つの注意点を挙げます。
過剰なルール設定を避ける
すべてを厳密に規定すると、逆に使いづらくなってしまいます。禁止事項はユーザーに大きな影響を与えるものに絞り、基本は原則と判断基準を示す程度にとどめるのが良いでしょう。
全員が使いやすいドキュメント設計
デザイナーだけでなく、エンジニアやPM、CS担当者も利用することを前提にします。「なぜそうするのか」から始まり、「どう使うのか」「具体的なコード例」までを段階的に書いておくと、誰にとってもわかりやすいドキュメントになります。
小規模から始めて段階的に拡張
初めから全てを揃える必要はありません。まずはボタンやフォームなど影響範囲の大きい部品から着手し、徐々に適用範囲を広げていく方が定着しやすいです。
——次に、実際の企業での事例を通じて、導入の具体的なイメージをつかみましょう。
導入事例とベストプラクティス
大規模サービスでの事例
大手企業では、複数の事業部や異なる技術スタックを横断してデザインシステムを導入しています。トークンや基幹コンポーネントだけを共通化し、事業ごとの拡張は別パッケージで管理するなど、柔軟性と統一性を両立させる工夫が見られます。
スタートアップでの活用例
人数が限られているスタートアップでは、早期からデザインシステムを導入することでスケーラビリティを確保しています。まずはデザイントークンと基本コンポーネントを整え、素早く試作と実装を繰り返せる基盤をつくるのが特徴です。
海外企業の先進事例
GoogleやAtlassianといった海外企業の事例では、アクセシビリティや国際化を前提にしたデザインシステムが一般的です。また、自動生成や多テーマ展開を取り入れることで、効率的な運用を実現しています。
——最後に、運用の課題とこれからの展望について整理していきます。
デザインシステム運用の課題と今後の展望
運用コストとリソース確保
デザインシステムは作るよりも「維持すること」のほうが大変です。専任の人員を確保するか、外部のデザイナーをスポットで活用するなど、継続的に運用できる体制づくりが求められます【turn0file1】。
ツールや技術の進化への適応
FigmaやAIツールなど、デザイン環境は急速に進化しています。新しい機能に合わせてシステムを更新し続けることで、現場に合った仕組みを保つことができます。JOOiのアンケート結果からも、Figmaを中心にした実務経験が多数派となっており【turn0file2】、ツール進化に合わせた運用が欠かせません。
今後の自動化とAI活用
AIによるデザイン生成やレビュー自動化は、今後ますます一般的になっていきます。実際、JOOiのイベント調査でも7割以上がAI活用に関心を示しています。デザインシステムにデータやルールを蓄積しておけば、AIの力を活かして効率と品質を同時に高めることができます。
まとめ
デザインシステムは「統一感を保つための仕組み」を超えて、事業のスピードや品質を引き上げる戦略的な基盤です。小さなステップから始め、効果を測りながら拡張していくことで、組織に根付かせることができます。外部の専門人材やAIも取り入れながら、次世代の運用へと進化させることが可能です。これからのプロダクト開発に欠かせない投資として、デザインシステムの導入をぜひ検討してみてください。
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デザインシステムとは?基本概念から導入メリット・構築方法まで徹底解説
投稿日:
2024.01.01
プロダクトが成長すると、UIはその都度追加され、気づけば似ているようで微妙に違うボタンやトーンが並んでしまうことがあります。スピードと一貫性を両立するために必要なのが「デザインシステム」です。本記事では、基礎から構成要素、導入メリット、構築・運用方法までを体系的に解説していきます。読み終えるころには、次の四半期で取り組むべき一歩が見えてくるはずです。ぜひ最後まで読んでみてください。
デザインシステムとは何か?
デザインシステムは組織全体で意思決定を揃え、プロダクト開発を加速させるためのフレームワークです。「見た目を揃えるための仕組み」だけではありません。スタイルやコンポーネント、コード、ドキュメント、運用ルールをまとめ、事業の成果と結びつけていきます。
デザインシステムの定義と目的
デザインシステムとは「ブランド体験を再現可能にするための規則や資産、プロセスの集合体」です。色やタイポグラフィ、余白などをまとめるデザイントークン(デザインの基本単位)、再利用可能なUIコンポーネント、UX課題に対応するパターン、利用ルールを示すドキュメント、そして改善を続けるための運用プロセスで構成されます。
目的は大きく3つあります。
①UIを一貫させること
②デザインや開発の効率化
③ブランド価値を高めること です。
さらに、アクセシビリティ(誰でも使いやすい設計)やパフォーマンスも最初から意識することで、後から大きな改修をするリスクを減らすことができます。
スタイルガイドやパターンライブラリとの違い
スタイルガイドは色や文字のルールをまとめた“見た目の辞書”であり、パターンライブラリはよく使うUIやUXの解決策を集めた“便利帳”のようなものです。
一方、デザインシステムは「なぜそのデザインになっているのか」という根拠や、変更のルールまで含んでいます。たとえば「なぜPrimaryカラーが#1463FFなのか」を、色覚多様性やコントラスト比といった観点まで説明し、Figmaやコードに自動的に反映させる仕組みを持ちます。単なる要素集ではなく「運用できる仕組み」である点が大きな違いです。
なぜ今注目されているのか
近年は複数デバイス・複数プロダクトを並行して開発するのが当たり前になり、スピードと品質を同時に求められています。その中で「一度決めたルールを速やかに全体へ反映できる仕組み」が必須になってきました。
また、デザイナーの利用ツールがFigmaに収斂してきたことも追い風です。JOOiのアンケートでも、Figma実務経験が75.6%、Web UI経験者は72.7%にのぼり、SaaSや金融など要件の厳しい領域で活躍する人材も多いことがわかっています。つまり、標準化しやすい環境が整っているのです。
さらに、AI活用への関心も高まっています。JOOi主催のイベントアンケートでは7割以上がAI活用テーマに興味ありと回答し、レビューや生成の自動化に期待する声も多くありました。デザインシステムはこうしたAI活用の土台にもなります。
ここまでで「なぜ必要なのか」を整理しました。次は「何でできているのか」を詳しく見ていきます。
デザインシステムの構成要素
デザインシステムは下位から上位に積み上げる仕組みで考えるとわかりやすいです。基礎となるトークンから始まり、コンポーネント、パターン、そして運用ドキュメントへとつながっていきます。
デザイントークン
色、文字サイズや行間、余白、影、アニメーションなどを「デザイントークン」という最小単位で定義します。これらをJSONやCSS Variablesなどの形式で管理することで、全プロダクトに一貫して適用できます。
たとえば「Primaryボタンの色」を「#1463FF」ではなく「Primary.Color」と定義しておけば、ブランドカラーを変えたときに一括で変更が反映されます。トークンを役割ベースで命名しておくと、変更や拡張に強くなります。
UIコンポーネント
ボタン、フォーム、ナビゲーション、カードなど、再利用可能な部品を「UIコンポーネント」として設計します。コンポーネントはアクセシビリティを考慮し、キーボード操作やスクリーンリーダーでの利用もできるようにします。
また、Figmaのコンポーネントと実装(React/Vueなど)を双方向に結びつけることで、デザインと開発の差分を減らすことができます。Storybookなどのツールを使えば、実装例をドキュメント化しながらテストも並行できます。
パターン・テンプレート
「ログイン」「決済」「エラーメッセージ」「エンプティステート」など、ユーザーが直面する典型的なシナリオをまとめたものがパターンやテンプレートです。
単なる部品の組み合わせではなく「どうすれば使いやすいのか」という解決方法を標準化する役割を持っています。これによりUX全体の品質が一定に保たれ、ユーザーは安心して操作できます。
ドキュメンテーションとガイドライン
最後に欠かせないのがドキュメントです。使い方のルールに加えて「なぜそうするのか」という背景を記録しておくことで、デザイナーだけでなくエンジニアやプロダクトマネージャーも理解できます。
具体例、禁止例、実装コード、アクセシビリティ要件などをわかりやすくまとめることで、誰が見ても同じ解釈ができる状態を作れます。
構成要素がわかったところで、導入するとどんな効果があるのかを整理していきます。
デザインシステム導入のメリット
デザインシステムの導入は「見た目を揃えるため」だけではありません。事業成果や開発スピードにも直結します。ここでは、導入によって得られる3つの主要なメリットを見ていきます。
UIの一貫性向上
ユーザーはアプリやWebサイトの中で、一貫したデザインに触れることで安心感を得ます。逆に似て非なるボタンや入力フォームが混在していると、戸惑いが生じ、離脱率にもつながります。デザインシステムを導入することで、すべてのプロダクトやデバイスで同じルールが適用され、ユーザーは迷わず操作できるようになります。とくに金融や医療のように、ミスが大きなリスクに直結する分野では、その価値はさらに高まります。
開発・デザイン効率の向上
再利用できるパーツがそろっていれば、新しい機能を作るときもゼロからデザインする必要はありません。結果として作業時間が短縮され、レビューや修正も効率的になります。特にJOOiのデザイナー調査では、Figmaの利用経験が75.6%と多く、共通の環境でのコラボレーションが前提になっていることがわかります。つまり、標準化されたデザインシステムは現場にスムーズに浸透しやすいのです。
ブランド価値の強化
統一されたデザインは、ユーザーの記憶にも残りやすくなります。色や文字だけでなく、モーションやマイクロコピーなど細部まで一貫していると、ブランドとしての存在感が強まり、信頼性も向上します。広告やキャンペーンに頼らなくても、日常的な利用体験そのものがブランディングにつながるのです。
導入の効果を理解したところで、次は実際の構築ステップを確認していきましょう。
デザインシステム構築のステップ
デザインシステムは一度に完成させるものではありません。段階的に整え、少しずつ適用範囲を広げていくことが成功のポイントです。
現状分析と要件定義
まずは現状のデザインを棚卸しします。色やフォントのバリエーション、似ているけれど微妙に異なるUI部品を洗い出し、どこに課題があるかを把握します。次に、何を解決したいのか、どのKPIに影響を与えるのかを明確にして、システム化の目的を定義します。
スタイルガイド・トークンの策定
ブランドカラーやフォントサイズ、余白の基準などを「デザイントークン」として定義します。これにより、全てのプロダクトで共通のルールを使えるようになります。ここでアクセシビリティや多言語対応も意識しておくと、後から修正するコストを抑えられます。
UIコンポーネントの設計
ボタンや入力フォームなど主要なUI部品を定義し、再利用できるように設計します。状態やサイズ、エラーメッセージなども含めて整理し、Storybookなどでテストやドキュメントを並行して整備すると効率的です。
ドキュメント作成と共有
作ったルールや部品を、誰でも理解できるようにまとめます。デザイナーだけでなく、エンジニアやプロダクトマネージャーにもわかりやすい形式で、利用例や禁止例を添えることが大切です。検索や参照がしやすい環境を用意して、日常的にアクセスできるようにします。
運用・改善サイクルの確立
一度作って終わりではなく、継続的に改善する仕組みをつくります。新しい要件が出たときにどう追加するのか、変更をどうリリースするのかをルール化しておくと混乱を防げます。JOOiのように外部のハイスキルデザイナーをプロジェクトにアサインすることで、リソース不足を補いながら運用する方法も有効です【turn0file1】。
続いて、導入の際に陥りやすい落とし穴と、その回避ポイントを見ていきます。
デザインシステムを作るときに気をつけるべきこと
成功の鍵は「使いやすさ」と「持続性」です。ここでは3つの注意点を挙げます。
過剰なルール設定を避ける
すべてを厳密に規定すると、逆に使いづらくなってしまいます。禁止事項はユーザーに大きな影響を与えるものに絞り、基本は原則と判断基準を示す程度にとどめるのが良いでしょう。
全員が使いやすいドキュメント設計
デザイナーだけでなく、エンジニアやPM、CS担当者も利用することを前提にします。「なぜそうするのか」から始まり、「どう使うのか」「具体的なコード例」までを段階的に書いておくと、誰にとってもわかりやすいドキュメントになります。
小規模から始めて段階的に拡張
初めから全てを揃える必要はありません。まずはボタンやフォームなど影響範囲の大きい部品から着手し、徐々に適用範囲を広げていく方が定着しやすいです。
——次に、実際の企業での事例を通じて、導入の具体的なイメージをつかみましょう。
導入事例とベストプラクティス
大規模サービスでの事例
大手企業では、複数の事業部や異なる技術スタックを横断してデザインシステムを導入しています。トークンや基幹コンポーネントだけを共通化し、事業ごとの拡張は別パッケージで管理するなど、柔軟性と統一性を両立させる工夫が見られます。
スタートアップでの活用例
人数が限られているスタートアップでは、早期からデザインシステムを導入することでスケーラビリティを確保しています。まずはデザイントークンと基本コンポーネントを整え、素早く試作と実装を繰り返せる基盤をつくるのが特徴です。
海外企業の先進事例
GoogleやAtlassianといった海外企業の事例では、アクセシビリティや国際化を前提にしたデザインシステムが一般的です。また、自動生成や多テーマ展開を取り入れることで、効率的な運用を実現しています。
——最後に、運用の課題とこれからの展望について整理していきます。
デザインシステム運用の課題と今後の展望
運用コストとリソース確保
デザインシステムは作るよりも「維持すること」のほうが大変です。専任の人員を確保するか、外部のデザイナーをスポットで活用するなど、継続的に運用できる体制づくりが求められます【turn0file1】。
ツールや技術の進化への適応
FigmaやAIツールなど、デザイン環境は急速に進化しています。新しい機能に合わせてシステムを更新し続けることで、現場に合った仕組みを保つことができます。JOOiのアンケート結果からも、Figmaを中心にした実務経験が多数派となっており【turn0file2】、ツール進化に合わせた運用が欠かせません。
今後の自動化とAI活用
AIによるデザイン生成やレビュー自動化は、今後ますます一般的になっていきます。実際、JOOiのイベント調査でも7割以上がAI活用に関心を示しています。デザインシステムにデータやルールを蓄積しておけば、AIの力を活かして効率と品質を同時に高めることができます。
まとめ
デザインシステムは「統一感を保つための仕組み」を超えて、事業のスピードや品質を引き上げる戦略的な基盤です。小さなステップから始め、効果を測りながら拡張していくことで、組織に根付かせることができます。外部の専門人材やAIも取り入れながら、次世代の運用へと進化させることが可能です。これからのプロダクト開発に欠かせない投資として、デザインシステムの導入をぜひ検討してみてください。
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