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優れたUI/UXデザイナーの伝えるためのプレゼンスキルとは?
投稿日:
2024.01.01
UI/UXデザイナーの役割は、美しいUIをつくったり、心地よいUXを設計したりするだけでは終わりません。
本当にプロジェクトを前に進めるのは「その価値を相手に伝え、理解と賛同を得る力」です。
特に企業の規模が大きくなるほど、承認までのフローは複雑になり、関わるステークホルダーも増えていきます。どれほど優れたデザインでも、説明が不十分であれば採用されず、改善のチャンスを逃してしまうこともあります。
この記事では、UI/UXデザイナーが成果を上げるために欠かせないプレゼンテーションスキルを、構造・戦略・実践テクニックの観点から解説します。
デザイナーに求められるプレゼンテーション能力
UI/UXデザイナーに必要なのは「体験設計を作る」力だけではなく、「なぜその設計が良いのかを説明し、共感を得る」力です。成果物の背景や目的、そしてユーザーにどんな影響を与えるのかを言葉で整理し、相手に納得してもらえる形で提示することが重要です。
例えば、UI改善案を「ブランドイメージを洗練する」とだけ説明しても、デザインに詳しくない意思決定者には響きません。
代わりに「ブランドカラーを統一することで、ユーザーの記憶定着率が7%向上する見込みです」と数値を交えて伝えれば、理解と共感を得やすくなります。
UI/UXプレゼンテーション特有の課題
UI/UXデザインの特徴は、画面遷移やインタラクションといった「動き」にあります。そのため、静止画資料だけでは体験の本質を伝えることが難しいのです。
例えば、モバイルアプリのオンボーディング改善案では、スワイプやフェードといったアニメーションの速度や滑らかさがユーザー体験に大きく影響します。しかし静止画だけでは、そのニュアンスが誤解される可能性があります。だからこそ、動くプロトタイプや動画を使って提示することが欠かせません。
成功するプレゼンテーションの効果
完成度の高いプレゼンは、承認スピードを高め、クライアント満足度やチームの連携を改善します。さらに実装時の認識のズレを減らし、修正工数や手戻りを防ぐことで、最終的にROIの向上にもつながります。
実際に、あるECサイト改善プロジェクトでは、動くプロトタイプを使ったことで意思決定までの会議回数が従来の半分になり、リリース時期を3週間前倒しできました。このように「伝える力」が成果に直結すると捉えることができます。
UI/UXプレゼンテーションの基本構成
プレゼンテーションは、ただデザインを並べるだけでは相手に伝わりません。論理的で一貫性のある構成を持たせることで、聞き手の理解が深まり、納得感も高まります。ここでは基本の流れを解説します。
プレゼンテーションの目的設定
まず冒頭で「ビジネスゴール」と「ユーザーゴール」の両方を提示することが多いです。
例
ビジネスゴール:「カート離脱率を15%改善する」
ユーザーゴール:「決済完了までの迷いを減らし、快適に購入できる体験を提供する」
この二つを明確にすることで、聞き手全員が同じ評価基準を持ち、議論が進めやすくなります。
会話例
経営層「この改善は売上に直結しますか?」
デザイナー「はい。購入完了率を68%から75%に引き上げる試算で、月間売上は約1,200万円増加する見込みです。」
基本的な構成フレームワーク
プレゼンの流れは次の5ステップが効果的です。

課題提起 – KPIやユーザー調査を基に現状の問題を明確化
解決策提示 – デザイン案の概要と方向性を示す
根拠説明 – ユーザビリティテストや競合比較で裏付け
実装計画 – スケジュールや開発体制、依存関係を共有
期待効果 – 改善後の数値予測や市場インパクトを提示
ストーリーテリングの活用
数字や資料だけでなく、ユーザー体験を物語として描くことが重要です。ユーザージャーニーをもとに感情と行動の変化を時系列で示すと、聞き手は「体験の価値」を直感的に理解できます。
例:ペルソナ「美咲さん(32歳・子育て中)」の日用品購入シナリオ
アプリ起動:トップ画面で目的の商品カテゴリが見つからず不安を感じる
検索利用:検索結果に不要な商品が多く、探すのに時間がかかる
絞り込み改善:改修後は条件指定が3タップで完了、欲しい商品がすぐ表示される
購入完了:決済フォームが簡略化され、ストレスなく購入できる
このように具体的に描くと「なぜこのUIが必要なのか」が、感覚だけでなくデータと体験の両面で伝わります。
時間配分と優先順位付け
限られた時間の中で、全てを均等に話す必要はありません。
経営層にはROIや戦略的価値
開発チームには実装負荷や技術的制約
それぞれの関心に合わせて重点を置きます。細かな仕様や詳細データは補足資料にまとめ、本番はインパクトのある要点に時間を割くことが効果的です。
動くプロトタイプを活用した資料作成
UI/UXデザインの「体験」を伝えるには、静止画だけでは不十分です。ここでは主要なプロトタイピングツールごとの活用方法と工夫を紹介します。
Figma・XD・Sketchでの資料制作
Figmaでの資料制作
基本の流れ
プロトタイプリンクを生成
関係者に共有し、事前にコメントを依頼
プレゼン時に同リンクを操作しながら提示
FigmaはURL共有でリアルタイム閲覧ができ、コメント機能で即時フィードバックを受けられます。会議前に全員にリンクを配布しておけば、議論がスムーズに進みます。
効率化のポイント
バージョン履歴:プレゼン用に不要なレイヤーを非表示にした状態を保存
コメントモード:事前に関係者が書き込めるよう設定し、本番は議論に集中
インタラクションプリセット:繰り返し使う動きを登録し、作業時間を短縮
Adobe XDでの資料制作
基本の流れ
アートボード間の遷移とアニメーションを設定
動作確認後、動画として書き出し
資料やデモに組み込んで提示
XDは直感的にアニメーションや画面遷移を設定できるため、短時間で動く試作品を作れます。特にアプリUIの滑らかな動きの再現に強みがあります。
効率化のポイント
コンポーネント化:ボタンやカードを部品化し、修正を一括反映
自動アニメーション:スクロールやフェードを簡単に設定し、実装をイメージしやすく
Sketchでの資料制作
基本の流れ
画面デザインを作成
プラグインでZeplinに書き出し
開発仕様とセットで提示
Sketchはプラグインを活用することで、Web実装に近い構造を設計できます。Zeplinなどの連携ツールを使えば、そのままコーディング工程に接続でき、開発との橋渡しがしやすいのが特徴です。
インタラクションとアニメーションの見せ方
マイクロインタラクション(例:ボタンホバー、ページ遷移時の動き)は、短い動画やGIFに変換して資料に埋め込むと直感的に理解してもらえます。
例:「購入ボタンを押すと即座に確認画面が表示される」動きを示すことで、ユーザーの離脱防止につながる設計意図を共有できます。
デバイス表示エリアとテキスト説明の配置
動画やモックアップの横に短い説明文を添えると、動画を止めずに意図が伝わります。複数画面を連続で見せる場合は、画面右側にキャプションを加えると、聞き手の理解がさらにスムーズになります。
ハイブリッド資料制作のメリット
動くプロトタイプは「体験」を伝え、静的資料は「仕様」を補足します。両方を組み合わせることで、意思決定者にはビジョンを、実装者には正確な要件を伝えられるのです。印象に残るプレゼンと、実務につながる資料を同時に実現できます。
デザイン提案の承認を得るテクニック
デザイン提案を通すためには、プレゼンの工夫だけでなく、その前後のプロセスが重要です。ここでは承認率を高めるための実践ポイントを紹介します。
事前準備と情報収集
「プレゼンの成功は8割が事前準備で決まる」と言われています。以下の点を事前に押さえておきましょう。
聞き手の職務と関心領域
既存課題の明確化
会議体の構造
制約条件
これらを理解しておくことで、プレゼン中に想定外の質問で詰まるリスクを減らせます。
反対意見への対処法
事前に想定される反対意見については洗い出しておき、可能であれば対応策についてもプレゼンテーションに入れておくことが重要です。
会話例
開発側:「実装に2週間追加でかかるのでは?」
デザイナー:「既存コードを流用すれば4日短縮でき、全体の遅延は発生しません。」
このように、数値や事例を根拠に示すことで信頼を得られます。
数値とエビデンスの活用
説得力を高めるには客観的なデータが欠かせません。
ユーザーテストの結果
A/Bテストによる改善率
業界平均との比較
これらをグラフやシミュレーション表にまとめて提示すると、感覚的な説明よりも納得してもらいやすくなります。
フォローアップと継続的コミュニケーション
プレゼンは、終わった後の行動も重要です。
スムーズに議事録や補足資料を共有する
次のステップを可能であれば、その場で明確化しておく
Slackやメールで定期的に進捗を報告する
迅速かつ継続的な対応は、信頼関係の構築に直結します。
ステークホルダー別の戦略
同じ資料をすべての相手に使い回すのではなく、相手ごとに強調点を変えることが有効です。

経営層にはROIや事業価値を強調
開発チームには工数や実装のしやすさを重点的に説明
営業・マーケティングには各KPIへの影響や競合優位性を示す
カスタマイズされたアプローチは承認率を大きく高めます。
ステークホルダー別プレゼンテーション戦略
経営陣・意思決定者向け
経営層には「結論と効果」を最初に提示し、数字で裏付けるのが効果的です。
例:「平均注文額8%向上 → 年間売上4,000万円増加」
さらに決算資料や中期経営計画と結びつけると、戦略的な説得力が増します。
開発チーム・エンジニア向け
開発チームには、実装のしやすさ・保守性・工数を具体的に伝えます。
例:「既存コンポーネントを流用すれば工数は8時間で済む」
また、技術的負債を増やさない設計方針も合わせて説明すると、長期的な視点からの合意が得られやすくなります。
マーケティング・営業チーム向け
マーケや営業には、顧客行動や市場インパクトを数値と事例で示します。
例:「検索機能の改善で離脱率15%低下」
さらに、実際の広告キャンペーンや販促資料への反映イメージを添えると、即活用をイメージしてもらえます。
プレゼンテーション実践とスキル向上
練習とリハーサルの重要性
本番を想定し、機材・接続・会場レイアウトを事前に確認しましょう。デモが動かない場合に備え、動画や静止画など代替資料も用意しておくと安心です。複数回のリハーサルで、話すテンポやジェスチャーも調整できます。
フィードバック収集と改善
終了後は「印象に残った点」と「改善点」を参加者に聞き、次回に反映させます。改善項目は1〜2点に絞り、確実に修正することでスキルが積み上がります。
プレゼンテーションスキルの継続学習
他者のプレゼンを観察することも学びになります。カンファレンスや社内勉強会に参加し、自分の構成や話し方を見直しましょう。小規模でも登壇を重ねることで、自然体で説得力のある話し方が身につきます。
よくある失敗パターンと回避策
資料の作り込みすぎで時間オーバー
相手視点を欠いた説明
データの裏付けがなく感覚的な説明だけ
Q&A時間を取らず一方的に終了
失敗とその回避策をチームで共有することで、同じミスを繰り返さない文化が根付きます。
まとめ
UI/UXデザインの価値は、アウトプットそのものよりも「どう伝え、理解してもらえるか」で最大化されます。動くプロトタイプやストーリーテリング、数値的な裏付け、そして相手ごとの戦略的アプローチを組み合わせることで、承認率も実装スピードも向上します。
プレゼンスキルもデザインと同じく、改善を積み重ねて洗練されるものです。案件ごとに振り返りを行い、成功要因と改善点を記録することで、次回の精度が飛躍的に高まります。次のプレゼンではぜひ今回のポイントを意識し、自分の表現力を一段上のレベルへ引き上げてみてください。
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本当にプロジェクトを前に進めるのは「その価値を相手に伝え、理解と賛同を得る力」です。
特に企業の規模が大きくなるほど、承認までのフローは複雑になり、関わるステークホルダーも増えていきます。どれほど優れたデザインでも、説明が不十分であれば採用されず、改善のチャンスを逃してしまうこともあります。
この記事では、UI/UXデザイナーが成果を上げるために欠かせないプレゼンテーションスキルを、構造・戦略・実践テクニックの観点から解説します。
デザイナーに求められるプレゼンテーション能力
UI/UXデザイナーに必要なのは「体験設計を作る」力だけではなく、「なぜその設計が良いのかを説明し、共感を得る」力です。成果物の背景や目的、そしてユーザーにどんな影響を与えるのかを言葉で整理し、相手に納得してもらえる形で提示することが重要です。
例えば、UI改善案を「ブランドイメージを洗練する」とだけ説明しても、デザインに詳しくない意思決定者には響きません。
代わりに「ブランドカラーを統一することで、ユーザーの記憶定着率が7%向上する見込みです」と数値を交えて伝えれば、理解と共感を得やすくなります。
UI/UXプレゼンテーション特有の課題
UI/UXデザインの特徴は、画面遷移やインタラクションといった「動き」にあります。そのため、静止画資料だけでは体験の本質を伝えることが難しいのです。
例えば、モバイルアプリのオンボーディング改善案では、スワイプやフェードといったアニメーションの速度や滑らかさがユーザー体験に大きく影響します。しかし静止画だけでは、そのニュアンスが誤解される可能性があります。だからこそ、動くプロトタイプや動画を使って提示することが欠かせません。
成功するプレゼンテーションの効果
完成度の高いプレゼンは、承認スピードを高め、クライアント満足度やチームの連携を改善します。さらに実装時の認識のズレを減らし、修正工数や手戻りを防ぐことで、最終的にROIの向上にもつながります。
実際に、あるECサイト改善プロジェクトでは、動くプロトタイプを使ったことで意思決定までの会議回数が従来の半分になり、リリース時期を3週間前倒しできました。このように「伝える力」が成果に直結すると捉えることができます。
UI/UXプレゼンテーションの基本構成
プレゼンテーションは、ただデザインを並べるだけでは相手に伝わりません。論理的で一貫性のある構成を持たせることで、聞き手の理解が深まり、納得感も高まります。ここでは基本の流れを解説します。
プレゼンテーションの目的設定
まず冒頭で「ビジネスゴール」と「ユーザーゴール」の両方を提示することが多いです。
例
ビジネスゴール:「カート離脱率を15%改善する」
ユーザーゴール:「決済完了までの迷いを減らし、快適に購入できる体験を提供する」
この二つを明確にすることで、聞き手全員が同じ評価基準を持ち、議論が進めやすくなります。
会話例
経営層「この改善は売上に直結しますか?」
デザイナー「はい。購入完了率を68%から75%に引き上げる試算で、月間売上は約1,200万円増加する見込みです。」
基本的な構成フレームワーク
プレゼンの流れは次の5ステップが効果的です。

課題提起 – KPIやユーザー調査を基に現状の問題を明確化
解決策提示 – デザイン案の概要と方向性を示す
根拠説明 – ユーザビリティテストや競合比較で裏付け
実装計画 – スケジュールや開発体制、依存関係を共有
期待効果 – 改善後の数値予測や市場インパクトを提示
ストーリーテリングの活用
数字や資料だけでなく、ユーザー体験を物語として描くことが重要です。ユーザージャーニーをもとに感情と行動の変化を時系列で示すと、聞き手は「体験の価値」を直感的に理解できます。
例:ペルソナ「美咲さん(32歳・子育て中)」の日用品購入シナリオ
アプリ起動:トップ画面で目的の商品カテゴリが見つからず不安を感じる
検索利用:検索結果に不要な商品が多く、探すのに時間がかかる
絞り込み改善:改修後は条件指定が3タップで完了、欲しい商品がすぐ表示される
購入完了:決済フォームが簡略化され、ストレスなく購入できる
このように具体的に描くと「なぜこのUIが必要なのか」が、感覚だけでなくデータと体験の両面で伝わります。
時間配分と優先順位付け
限られた時間の中で、全てを均等に話す必要はありません。
経営層にはROIや戦略的価値
開発チームには実装負荷や技術的制約
それぞれの関心に合わせて重点を置きます。細かな仕様や詳細データは補足資料にまとめ、本番はインパクトのある要点に時間を割くことが効果的です。
動くプロトタイプを活用した資料作成
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Figmaでの資料制作
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アートボード間の遷移とアニメーションを設定
動作確認後、動画として書き出し
資料やデモに組み込んで提示
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効率化のポイント
コンポーネント化:ボタンやカードを部品化し、修正を一括反映
自動アニメーション:スクロールやフェードを簡単に設定し、実装をイメージしやすく
Sketchでの資料制作
基本の流れ
画面デザインを作成
プラグインでZeplinに書き出し
開発仕様とセットで提示
Sketchはプラグインを活用することで、Web実装に近い構造を設計できます。Zeplinなどの連携ツールを使えば、そのままコーディング工程に接続でき、開発との橋渡しがしやすいのが特徴です。
インタラクションとアニメーションの見せ方
マイクロインタラクション(例:ボタンホバー、ページ遷移時の動き)は、短い動画やGIFに変換して資料に埋め込むと直感的に理解してもらえます。
例:「購入ボタンを押すと即座に確認画面が表示される」動きを示すことで、ユーザーの離脱防止につながる設計意図を共有できます。
デバイス表示エリアとテキスト説明の配置
動画やモックアップの横に短い説明文を添えると、動画を止めずに意図が伝わります。複数画面を連続で見せる場合は、画面右側にキャプションを加えると、聞き手の理解がさらにスムーズになります。
ハイブリッド資料制作のメリット
動くプロトタイプは「体験」を伝え、静的資料は「仕様」を補足します。両方を組み合わせることで、意思決定者にはビジョンを、実装者には正確な要件を伝えられるのです。印象に残るプレゼンと、実務につながる資料を同時に実現できます。
デザイン提案の承認を得るテクニック
デザイン提案を通すためには、プレゼンの工夫だけでなく、その前後のプロセスが重要です。ここでは承認率を高めるための実践ポイントを紹介します。
事前準備と情報収集
「プレゼンの成功は8割が事前準備で決まる」と言われています。以下の点を事前に押さえておきましょう。
聞き手の職務と関心領域
既存課題の明確化
会議体の構造
制約条件
これらを理解しておくことで、プレゼン中に想定外の質問で詰まるリスクを減らせます。
反対意見への対処法
事前に想定される反対意見については洗い出しておき、可能であれば対応策についてもプレゼンテーションに入れておくことが重要です。
会話例
開発側:「実装に2週間追加でかかるのでは?」
デザイナー:「既存コードを流用すれば4日短縮でき、全体の遅延は発生しません。」
このように、数値や事例を根拠に示すことで信頼を得られます。
数値とエビデンスの活用
説得力を高めるには客観的なデータが欠かせません。
ユーザーテストの結果
A/Bテストによる改善率
業界平均との比較
これらをグラフやシミュレーション表にまとめて提示すると、感覚的な説明よりも納得してもらいやすくなります。
フォローアップと継続的コミュニケーション
プレゼンは、終わった後の行動も重要です。
スムーズに議事録や補足資料を共有する
次のステップを可能であれば、その場で明確化しておく
Slackやメールで定期的に進捗を報告する
迅速かつ継続的な対応は、信頼関係の構築に直結します。
ステークホルダー別の戦略
同じ資料をすべての相手に使い回すのではなく、相手ごとに強調点を変えることが有効です。

経営層にはROIや事業価値を強調
開発チームには工数や実装のしやすさを重点的に説明
営業・マーケティングには各KPIへの影響や競合優位性を示す
カスタマイズされたアプローチは承認率を大きく高めます。
ステークホルダー別プレゼンテーション戦略
経営陣・意思決定者向け
経営層には「結論と効果」を最初に提示し、数字で裏付けるのが効果的です。
例:「平均注文額8%向上 → 年間売上4,000万円増加」
さらに決算資料や中期経営計画と結びつけると、戦略的な説得力が増します。
開発チーム・エンジニア向け
開発チームには、実装のしやすさ・保守性・工数を具体的に伝えます。
例:「既存コンポーネントを流用すれば工数は8時間で済む」
また、技術的負債を増やさない設計方針も合わせて説明すると、長期的な視点からの合意が得られやすくなります。
マーケティング・営業チーム向け
マーケや営業には、顧客行動や市場インパクトを数値と事例で示します。
例:「検索機能の改善で離脱率15%低下」
さらに、実際の広告キャンペーンや販促資料への反映イメージを添えると、即活用をイメージしてもらえます。
プレゼンテーション実践とスキル向上
練習とリハーサルの重要性
本番を想定し、機材・接続・会場レイアウトを事前に確認しましょう。デモが動かない場合に備え、動画や静止画など代替資料も用意しておくと安心です。複数回のリハーサルで、話すテンポやジェスチャーも調整できます。
フィードバック収集と改善
終了後は「印象に残った点」と「改善点」を参加者に聞き、次回に反映させます。改善項目は1〜2点に絞り、確実に修正することでスキルが積み上がります。
プレゼンテーションスキルの継続学習
他者のプレゼンを観察することも学びになります。カンファレンスや社内勉強会に参加し、自分の構成や話し方を見直しましょう。小規模でも登壇を重ねることで、自然体で説得力のある話し方が身につきます。
よくある失敗パターンと回避策
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相手視点を欠いた説明
データの裏付けがなく感覚的な説明だけ
Q&A時間を取らず一方的に終了
失敗とその回避策をチームで共有することで、同じミスを繰り返さない文化が根付きます。
まとめ
UI/UXデザインの価値は、アウトプットそのものよりも「どう伝え、理解してもらえるか」で最大化されます。動くプロトタイプやストーリーテリング、数値的な裏付け、そして相手ごとの戦略的アプローチを組み合わせることで、承認率も実装スピードも向上します。
プレゼンスキルもデザインと同じく、改善を積み重ねて洗練されるものです。案件ごとに振り返りを行い、成功要因と改善点を記録することで、次回の精度が飛躍的に高まります。次のプレゼンではぜひ今回のポイントを意識し、自分の表現力を一段上のレベルへ引き上げてみてください。
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投稿日:
2024.01.01
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本当にプロジェクトを前に進めるのは「その価値を相手に伝え、理解と賛同を得る力」です。
特に企業の規模が大きくなるほど、承認までのフローは複雑になり、関わるステークホルダーも増えていきます。どれほど優れたデザインでも、説明が不十分であれば採用されず、改善のチャンスを逃してしまうこともあります。
この記事では、UI/UXデザイナーが成果を上げるために欠かせないプレゼンテーションスキルを、構造・戦略・実践テクニックの観点から解説します。
デザイナーに求められるプレゼンテーション能力
UI/UXデザイナーに必要なのは「体験設計を作る」力だけではなく、「なぜその設計が良いのかを説明し、共感を得る」力です。成果物の背景や目的、そしてユーザーにどんな影響を与えるのかを言葉で整理し、相手に納得してもらえる形で提示することが重要です。
例えば、UI改善案を「ブランドイメージを洗練する」とだけ説明しても、デザインに詳しくない意思決定者には響きません。
代わりに「ブランドカラーを統一することで、ユーザーの記憶定着率が7%向上する見込みです」と数値を交えて伝えれば、理解と共感を得やすくなります。
UI/UXプレゼンテーション特有の課題
UI/UXデザインの特徴は、画面遷移やインタラクションといった「動き」にあります。そのため、静止画資料だけでは体験の本質を伝えることが難しいのです。
例えば、モバイルアプリのオンボーディング改善案では、スワイプやフェードといったアニメーションの速度や滑らかさがユーザー体験に大きく影響します。しかし静止画だけでは、そのニュアンスが誤解される可能性があります。だからこそ、動くプロトタイプや動画を使って提示することが欠かせません。
成功するプレゼンテーションの効果
完成度の高いプレゼンは、承認スピードを高め、クライアント満足度やチームの連携を改善します。さらに実装時の認識のズレを減らし、修正工数や手戻りを防ぐことで、最終的にROIの向上にもつながります。
実際に、あるECサイト改善プロジェクトでは、動くプロトタイプを使ったことで意思決定までの会議回数が従来の半分になり、リリース時期を3週間前倒しできました。このように「伝える力」が成果に直結すると捉えることができます。
UI/UXプレゼンテーションの基本構成
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プレゼンテーションの目的設定
まず冒頭で「ビジネスゴール」と「ユーザーゴール」の両方を提示することが多いです。
例
ビジネスゴール:「カート離脱率を15%改善する」
ユーザーゴール:「決済完了までの迷いを減らし、快適に購入できる体験を提供する」
この二つを明確にすることで、聞き手全員が同じ評価基準を持ち、議論が進めやすくなります。
会話例
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デザイナー「はい。購入完了率を68%から75%に引き上げる試算で、月間売上は約1,200万円増加する見込みです。」
基本的な構成フレームワーク
プレゼンの流れは次の5ステップが効果的です。

課題提起 – KPIやユーザー調査を基に現状の問題を明確化
解決策提示 – デザイン案の概要と方向性を示す
根拠説明 – ユーザビリティテストや競合比較で裏付け
実装計画 – スケジュールや開発体制、依存関係を共有
期待効果 – 改善後の数値予測や市場インパクトを提示
ストーリーテリングの活用
数字や資料だけでなく、ユーザー体験を物語として描くことが重要です。ユーザージャーニーをもとに感情と行動の変化を時系列で示すと、聞き手は「体験の価値」を直感的に理解できます。
例:ペルソナ「美咲さん(32歳・子育て中)」の日用品購入シナリオ
アプリ起動:トップ画面で目的の商品カテゴリが見つからず不安を感じる
検索利用:検索結果に不要な商品が多く、探すのに時間がかかる
絞り込み改善:改修後は条件指定が3タップで完了、欲しい商品がすぐ表示される
購入完了:決済フォームが簡略化され、ストレスなく購入できる
このように具体的に描くと「なぜこのUIが必要なのか」が、感覚だけでなくデータと体験の両面で伝わります。
時間配分と優先順位付け
限られた時間の中で、全てを均等に話す必要はありません。
経営層にはROIや戦略的価値
開発チームには実装負荷や技術的制約
それぞれの関心に合わせて重点を置きます。細かな仕様や詳細データは補足資料にまとめ、本番はインパクトのある要点に時間を割くことが効果的です。
動くプロトタイプを活用した資料作成
UI/UXデザインの「体験」を伝えるには、静止画だけでは不十分です。ここでは主要なプロトタイピングツールごとの活用方法と工夫を紹介します。
Figma・XD・Sketchでの資料制作
Figmaでの資料制作
基本の流れ
プロトタイプリンクを生成
関係者に共有し、事前にコメントを依頼
プレゼン時に同リンクを操作しながら提示
FigmaはURL共有でリアルタイム閲覧ができ、コメント機能で即時フィードバックを受けられます。会議前に全員にリンクを配布しておけば、議論がスムーズに進みます。
効率化のポイント
バージョン履歴:プレゼン用に不要なレイヤーを非表示にした状態を保存
コメントモード:事前に関係者が書き込めるよう設定し、本番は議論に集中
インタラクションプリセット:繰り返し使う動きを登録し、作業時間を短縮
Adobe XDでの資料制作
基本の流れ
アートボード間の遷移とアニメーションを設定
動作確認後、動画として書き出し
資料やデモに組み込んで提示
XDは直感的にアニメーションや画面遷移を設定できるため、短時間で動く試作品を作れます。特にアプリUIの滑らかな動きの再現に強みがあります。
効率化のポイント
コンポーネント化:ボタンやカードを部品化し、修正を一括反映
自動アニメーション:スクロールやフェードを簡単に設定し、実装をイメージしやすく
Sketchでの資料制作
基本の流れ
画面デザインを作成
プラグインでZeplinに書き出し
開発仕様とセットで提示
Sketchはプラグインを活用することで、Web実装に近い構造を設計できます。Zeplinなどの連携ツールを使えば、そのままコーディング工程に接続でき、開発との橋渡しがしやすいのが特徴です。
インタラクションとアニメーションの見せ方
マイクロインタラクション(例:ボタンホバー、ページ遷移時の動き)は、短い動画やGIFに変換して資料に埋め込むと直感的に理解してもらえます。
例:「購入ボタンを押すと即座に確認画面が表示される」動きを示すことで、ユーザーの離脱防止につながる設計意図を共有できます。
デバイス表示エリアとテキスト説明の配置
動画やモックアップの横に短い説明文を添えると、動画を止めずに意図が伝わります。複数画面を連続で見せる場合は、画面右側にキャプションを加えると、聞き手の理解がさらにスムーズになります。
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動くプロトタイプは「体験」を伝え、静的資料は「仕様」を補足します。両方を組み合わせることで、意思決定者にはビジョンを、実装者には正確な要件を伝えられるのです。印象に残るプレゼンと、実務につながる資料を同時に実現できます。
デザイン提案の承認を得るテクニック
デザイン提案を通すためには、プレゼンの工夫だけでなく、その前後のプロセスが重要です。ここでは承認率を高めるための実践ポイントを紹介します。
事前準備と情報収集
「プレゼンの成功は8割が事前準備で決まる」と言われています。以下の点を事前に押さえておきましょう。
聞き手の職務と関心領域
既存課題の明確化
会議体の構造
制約条件
これらを理解しておくことで、プレゼン中に想定外の質問で詰まるリスクを減らせます。
反対意見への対処法
事前に想定される反対意見については洗い出しておき、可能であれば対応策についてもプレゼンテーションに入れておくことが重要です。
会話例
開発側:「実装に2週間追加でかかるのでは?」
デザイナー:「既存コードを流用すれば4日短縮でき、全体の遅延は発生しません。」
このように、数値や事例を根拠に示すことで信頼を得られます。
数値とエビデンスの活用
説得力を高めるには客観的なデータが欠かせません。
ユーザーテストの結果
A/Bテストによる改善率
業界平均との比較
これらをグラフやシミュレーション表にまとめて提示すると、感覚的な説明よりも納得してもらいやすくなります。
フォローアップと継続的コミュニケーション
プレゼンは、終わった後の行動も重要です。
スムーズに議事録や補足資料を共有する
次のステップを可能であれば、その場で明確化しておく
Slackやメールで定期的に進捗を報告する
迅速かつ継続的な対応は、信頼関係の構築に直結します。
ステークホルダー別の戦略
同じ資料をすべての相手に使い回すのではなく、相手ごとに強調点を変えることが有効です。

経営層にはROIや事業価値を強調
開発チームには工数や実装のしやすさを重点的に説明
営業・マーケティングには各KPIへの影響や競合優位性を示す
カスタマイズされたアプローチは承認率を大きく高めます。
ステークホルダー別プレゼンテーション戦略
経営陣・意思決定者向け
経営層には「結論と効果」を最初に提示し、数字で裏付けるのが効果的です。
例:「平均注文額8%向上 → 年間売上4,000万円増加」
さらに決算資料や中期経営計画と結びつけると、戦略的な説得力が増します。
開発チーム・エンジニア向け
開発チームには、実装のしやすさ・保守性・工数を具体的に伝えます。
例:「既存コンポーネントを流用すれば工数は8時間で済む」
また、技術的負債を増やさない設計方針も合わせて説明すると、長期的な視点からの合意が得られやすくなります。
マーケティング・営業チーム向け
マーケや営業には、顧客行動や市場インパクトを数値と事例で示します。
例:「検索機能の改善で離脱率15%低下」
さらに、実際の広告キャンペーンや販促資料への反映イメージを添えると、即活用をイメージしてもらえます。
プレゼンテーション実践とスキル向上
練習とリハーサルの重要性
本番を想定し、機材・接続・会場レイアウトを事前に確認しましょう。デモが動かない場合に備え、動画や静止画など代替資料も用意しておくと安心です。複数回のリハーサルで、話すテンポやジェスチャーも調整できます。
フィードバック収集と改善
終了後は「印象に残った点」と「改善点」を参加者に聞き、次回に反映させます。改善項目は1〜2点に絞り、確実に修正することでスキルが積み上がります。
プレゼンテーションスキルの継続学習
他者のプレゼンを観察することも学びになります。カンファレンスや社内勉強会に参加し、自分の構成や話し方を見直しましょう。小規模でも登壇を重ねることで、自然体で説得力のある話し方が身につきます。
よくある失敗パターンと回避策
資料の作り込みすぎで時間オーバー
相手視点を欠いた説明
データの裏付けがなく感覚的な説明だけ
Q&A時間を取らず一方的に終了
失敗とその回避策をチームで共有することで、同じミスを繰り返さない文化が根付きます。
まとめ
UI/UXデザインの価値は、アウトプットそのものよりも「どう伝え、理解してもらえるか」で最大化されます。動くプロトタイプやストーリーテリング、数値的な裏付け、そして相手ごとの戦略的アプローチを組み合わせることで、承認率も実装スピードも向上します。
プレゼンスキルもデザインと同じく、改善を積み重ねて洗練されるものです。案件ごとに振り返りを行い、成功要因と改善点を記録することで、次回の精度が飛躍的に高まります。次のプレゼンではぜひ今回のポイントを意識し、自分の表現力を一段上のレベルへ引き上げてみてください。
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