
アートディレクター
経営・マーケ・制作をつなぎ、ブランドの本質を見出すアートディレクター Arimotoさん
投稿日:
2026/08/28
JOOiには、肩書きや職域の枠を越えながら、事業の前進にコミットできるデザイナーが在籍しています。
今回ご紹介するのは、ドイツ・ベルリンを拠点にしながら活動する アートディレクターのArimotoさん。
現代美術の世界からキャリアをスタートし、デジタルマーケティング領域を経て、現在はフリーランスとして活動しています。
ブランドやキャンペーンの上流設計から、ビジュアルの制作・調整まで、一気通貫で推進するスタイルが特徴のデザイナーです。
この記事は海外での学びや制作経験、そしてAIを取り入れた実務的なワークフローまでArimotoさんが大切にしている世界観の読み解き方や、制作に集中できる環境のつくり方、AI活用方法などまとめました。
ぜひ最後までご覧ください。
インタビューアー
Arimoto

現代美術の領域からキャリアをスタートし、Webデザインやデジタルマーケティングを経て、現在はフリーランスとしてマーケター兼アートディレクターとして活動。ドイツ(ベルリン)を拠点に、SNS運用の戦略設計からアートディレクション、コピー、撮影ディレクションまで、レイヤーをまたいだ制作経験を持つ。海外での学びとしてマイアミ・アド・スクールにも通い、現在は卒業。
キャリアについて
現代美術からデザインへ。転機になった「世の中への影響」と「ブランドの成長」
Q. キャリアの出発点は現代美術だったとのことですが、当時はどんなことに惹かれていましたか?
Arimoto: 最初は現代美術の業界にいました。新しい表現がどう生まれてくるのかや、アート性のあるものがどのようにして価値が形成されたりされなかったりするのかに興味を持っていました。
その頃からWebデザインも行なっておりPhotoshopなどAdobe系のソフトにも触っていました。フリーランスでWebデザイナーをしながら、海外に行って1年くらい滞在した時期もあります。
Q. そこからデザインへ舵を切った決定打は何だったのでしょう?
Arimoto: 大きかったのは、世の中への影響の仕方が違うことです。美術は長い時間軸の中で評価が形成されたりされなかったりしますが、デザインは、もう少し直接的に需要に対して世間に影響力を与えられる。そこが自分にとっては大きかったです。
もうひとつは、ブランドが成長していく過程を見たい、という気持ちです。 某有名ブランドのように人の心の中に積み上がっていく存在って「美しい」と感じます。自分も、そういう積み上がっていくものづくりに関わりたいと思いました。
経営メンバーやマーケ責任者の意図を汲み取り、クリエイティブに落とし込む役割へ
Q. その後、Webデザインだけでなく、SNS運用の戦略からアートディレクション、コピー、撮影まで関わるまで、なぜそこまで領域が広がっていったんでしょう?
Arimoto: 日本に戻って「会社で働いてみたい」と思ったのと、Webデザインだけじゃなく、もう少し意思決定に関わる上流に携わってみたいという気持ちが強くなっていったのが大きいです。
またとにかく新しい業務に積極的に挑戦するということも同時に意識していました。
そうすることでSNS運用の戦略立てから実制作まで、一気にやる案件が入ってきたりして、スキルと対応範囲の幅が広がっていきました。
Q. Arimotoさんの話を聞いていると、制作だけでなく、それぞれの関係者とコミュニケーション方法が強みになっている印象です。仕事を進める時、どんな構造で業務を整理しているのでしょう?
Arimoto: ブランドの目的や企業としてのPRの方向性、そこからマーケティングの戦略や、もう一段下のキャンペーンの目的などがあり、それぞれに対して因果関係が整理されているデザインかどうかを意識しています。
それぞれの目的達成のために、何をどう表現に落としデザインを作るかを、いろんなレイヤーや視点で考えていく必要があると思っています。
例えば、ブリーフはもちろん毎回丁寧に読み込ませていただくのですが、それをベースに目的や方向性などをディスカッションしていくと、当初想定されていたものとは全く別のものを作る方がいいという結論になるケースは非常によくあります。クライアントと一緒に意見や経験を出し合ってブリーフ自体を作り上げていく、というのが感覚として近いと思います。
実績について
Mercedes-Benz × Gustaf Westman:クライアントの強いこだわりに応え、表現を磨き切るプロセス
Q. Arimotoさんの代表的な実績を教えてください。
Arimoto: メルセデス・ベンツとスウェーデンのデザイナー、グスタフ・ウエストマンとのコラボ案件ですね。
自分がコンセプトをゼロから全部組み立てたというよりは、「どれだけビジュアルに落とし込めるか」「言語的にどう拡張するか」という部分で関わった形です。

まず、キャンペーンコンセプトの設計とムードボード作りの部分から参画しました。最終的にマジカルリアリズムというコンセプトタイトルを付け、現実から抜け出していく非日常感を持たせながらも、シュルレアリスムのように完全な夢の世界まではいかないというようなバランス感を持った接地点を探りました。
撮影は別の方が担当して、撮影後の素材の扱いや、ポストプロダクションで音楽をどうするか、みたいな部分も相談しながら進めています。領域で言うとアートディレクションです。
プロモーションはドイツのインターナショナル向けでした。 伝統あるラグジュアリーブランドとしてビジュアルへのこだわりが非常に強いクライアントでしたので、高級感をキープしながらユニークさで注目を集めるビジュアル強度の実現に膨大な時間をかけました。リサーチの部分では、高級感とユニークさの両立という点でファッション系の広告写真を大いに参考にしました。
ブランドの本質に迫るための仕事術
ユーザー視点と俯瞰した視点を行き来し、ブランドの本質を理解する
Q. ブランドの世界観を読み解く時、最初に何から始めますか?
Arimoto: まずいろんなことを片っ端から調べます。手に届く範囲で買えるものは買ってみたり、Webで見たり、体験してみたりします。それこそ最近だとChatGPTのディープリサーチも使います。 最初から正解を決めにいくというより、材料や情報をとにかく集めていきます。 調べて、触れて、会話して。その上で方向性を決めて形にしていきます。
どういうユーザやニーズがあって、どういう特徴があって、どういうサービスや製品があるのか。知識が上がった状態で担当者さんと話すと、より深いインサイトなどを引き出しやすいです。
その過程で気づいたら自分もただのユーザーではなくコアなファンになっていることも多いです。ただ、客観視できていないとよくないと思っているので、俯瞰した視点を同時に持ち、目的やオーディエンスを向く必要がある。そのためユーザー視点と、俯瞰で見る視点。その2つを行き来しています。
フィードバックを受け取りながらブランドの本質を見出す
Q. 制作の中で一番やりがいを感じる瞬間はどこですか?
Arimoto: デザインは、出したあとにフィードバックが返ってくるのが大きいと思います。作ったものがコミュニケーションツールとして機能している実感がある。そこが嬉しいです。
単純に楽しいのは、手を動かしている時間です。夜中に「ここをこうしたら違う感じになるんじゃないか」とか、「見たことないものができるんじゃないか」と、ちょっとしたいたずらをしながら試している時が一番楽しい。
複雑なものも好きです。やってる最中は躁鬱みたいになるんですが、最終的に出力が良くなるとやっぱり楽しい。難しい条件の中でもアウトプットを改善していくうちにそれを乗り換えれる瞬間があり、その瞬間が嬉しいです。
AIツールについて
Midjourney × Photoshopで、合意形成と制作のスピードを上げる
Q. AIは普段どのように使っていますか?
Arimoto: かなり使っています。デザイン素材を作ったり、KVのドラフトを作ったり。
背景やプロップをMidjourneyで生成して、Photoshopで製品を当てて、色彩を調整するというのは日常的にやっています。
写真だと思われることもあります。使い続けていくうちに、AIっぽさを消していく方向に寄せられるようになります。調整の仕方が分かってくるというか、違和感を減らしながら自分がイメージしている方向にどんどん近づけていけるようになりますね。使えば使うほど癖が分かってきて手に馴染んでくるのはAdobe系のツールとかと同じだと思います。
AIが当たり前になるほど、求められるのは「判断」と「整え方」
Q. アートディレクション業務においてAIのパフォーマンスはどこにあると思いますか?
Arimoto:現状は、撮影前の認識のすり合わせに非常に向いています。
代理店でも、ムードボードやKVのドラフトはMidjourneyやNano Bananaなどの生成AIで作るのが当たり前に近い。
クライアントがAIでもOKという前提なら、最初の出力をAIで作っていく流れも増えると思います。
海外のクライアントの場合、最近ではAIでも問題ないというケースも増えてきているのも事実です。出力にもAI活用が入ってくる流れは加速していくと思います。大手ブランドのCMでさえも、全部がAIではないけど、要所のシーンでAIっぽさを感じることが増えてきている。そこで差が出るのは、アートディレクターの判断や整え方だと思います。
今後の展望
人の心に残るブランドの本質を正しく表現する
Q. 今後、関わりたいお仕事について教えてください。
Arimoto:上流の部分から落として、手を動かすところまで含めて とにかく一気通貫でやりたいです。
デザイン資産が正しく積み上がり、ブランドがより強固になるような仕事を、もっと増やしていけたらと思っています。
Q. これから企業と一緒に実現していきたいことを、改めて教えてください。
Arimoto: 広告のビジュアルとして成立するには、アテンションエコノミーの中で生き残れることが最低条件だと認識しています。 どれだけ注目を得られるかが初めに来る。その中で、ブランドのカラーを出しつつ、どれだけ人の意識や行動にポジティブな影響を与えられるか。人の意識をちゃんと奪うことができ、それでいていい意味で人の心にずっと残るようなものを、クライアントと一緒に作っていきたいです。
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経営・マーケ・制作をつなぎ、ブランドの本質を見出すアートディレクター Arimotoさん
投稿日:
2026/08/28
JOOiには、肩書きや職域の枠を越えながら、事業の前進にコミットできるデザイナーが在籍しています。
今回ご紹介するのは、ドイツ・ベルリンを拠点にしながら活動する アートディレクターのArimotoさん。
現代美術の世界からキャリアをスタートし、デジタルマーケティング領域を経て、現在はフリーランスとして活動しています。
ブランドやキャンペーンの上流設計から、ビジュアルの制作・調整まで、一気通貫で推進するスタイルが特徴のデザイナーです。
この記事は海外での学びや制作経験、そしてAIを取り入れた実務的なワークフローまでArimotoさんが大切にしている世界観の読み解き方や、制作に集中できる環境のつくり方、AI活用方法などまとめました。
ぜひ最後までご覧ください。
インタビューアー
Arimoto

現代美術の領域からキャリアをスタートし、Webデザインやデジタルマーケティングを経て、現在はフリーランスとしてマーケター兼アートディレクターとして活動。ドイツ(ベルリン)を拠点に、SNS運用の戦略設計からアートディレクション、コピー、撮影ディレクションまで、レイヤーをまたいだ制作経験を持つ。海外での学びとしてマイアミ・アド・スクールにも通い、現在は卒業。
キャリアについて
現代美術からデザインへ。転機になった「世の中への影響」と「ブランドの成長」
Q. キャリアの出発点は現代美術だったとのことですが、当時はどんなことに惹かれていましたか?
Arimoto: 最初は現代美術の業界にいました。新しい表現がどう生まれてくるのかや、アート性のあるものがどのようにして価値が形成されたりされなかったりするのかに興味を持っていました。
その頃からWebデザインも行なっておりPhotoshopなどAdobe系のソフトにも触っていました。フリーランスでWebデザイナーをしながら、海外に行って1年くらい滞在した時期もあります。
Q. そこからデザインへ舵を切った決定打は何だったのでしょう?
Arimoto: 大きかったのは、世の中への影響の仕方が違うことです。美術は長い時間軸の中で評価が形成されたりされなかったりしますが、デザインは、もう少し直接的に需要に対して世間に影響力を与えられる。そこが自分にとっては大きかったです。
もうひとつは、ブランドが成長していく過程を見たい、という気持ちです。 某有名ブランドのように人の心の中に積み上がっていく存在って「美しい」と感じます。自分も、そういう積み上がっていくものづくりに関わりたいと思いました。
経営メンバーやマーケ責任者の意図を汲み取り、クリエイティブに落とし込む役割へ
Q. その後、Webデザインだけでなく、SNS運用の戦略からアートディレクション、コピー、撮影まで関わるまで、なぜそこまで領域が広がっていったんでしょう?
Arimoto: 日本に戻って「会社で働いてみたい」と思ったのと、Webデザインだけじゃなく、もう少し意思決定に関わる上流に携わってみたいという気持ちが強くなっていったのが大きいです。
またとにかく新しい業務に積極的に挑戦するということも同時に意識していました。
そうすることでSNS運用の戦略立てから実制作まで、一気にやる案件が入ってきたりして、スキルと対応範囲の幅が広がっていきました。
Q. Arimotoさんの話を聞いていると、制作だけでなく、それぞれの関係者とコミュニケーション方法が強みになっている印象です。仕事を進める時、どんな構造で業務を整理しているのでしょう?
Arimoto: ブランドの目的や企業としてのPRの方向性、そこからマーケティングの戦略や、もう一段下のキャンペーンの目的などがあり、それぞれに対して因果関係が整理されているデザインかどうかを意識しています。
それぞれの目的達成のために、何をどう表現に落としデザインを作るかを、いろんなレイヤーや視点で考えていく必要があると思っています。
例えば、ブリーフはもちろん毎回丁寧に読み込ませていただくのですが、それをベースに目的や方向性などをディスカッションしていくと、当初想定されていたものとは全く別のものを作る方がいいという結論になるケースは非常によくあります。クライアントと一緒に意見や経験を出し合ってブリーフ自体を作り上げていく、というのが感覚として近いと思います。
実績について
Mercedes-Benz × Gustaf Westman:クライアントの強いこだわりに応え、表現を磨き切るプロセス
Q. Arimotoさんの代表的な実績を教えてください。
Arimoto: メルセデス・ベンツとスウェーデンのデザイナー、グスタフ・ウエストマンとのコラボ案件ですね。
自分がコンセプトをゼロから全部組み立てたというよりは、「どれだけビジュアルに落とし込めるか」「言語的にどう拡張するか」という部分で関わった形です。

まず、キャンペーンコンセプトの設計とムードボード作りの部分から参画しました。最終的にマジカルリアリズムというコンセプトタイトルを付け、現実から抜け出していく非日常感を持たせながらも、シュルレアリスムのように完全な夢の世界まではいかないというようなバランス感を持った接地点を探りました。
撮影は別の方が担当して、撮影後の素材の扱いや、ポストプロダクションで音楽をどうするか、みたいな部分も相談しながら進めています。領域で言うとアートディレクションです。
プロモーションはドイツのインターナショナル向けでした。 伝統あるラグジュアリーブランドとしてビジュアルへのこだわりが非常に強いクライアントでしたので、高級感をキープしながらユニークさで注目を集めるビジュアル強度の実現に膨大な時間をかけました。リサーチの部分では、高級感とユニークさの両立という点でファッション系の広告写真を大いに参考にしました。
ブランドの本質に迫るための仕事術
ユーザー視点と俯瞰した視点を行き来し、ブランドの本質を理解する
Q. ブランドの世界観を読み解く時、最初に何から始めますか?
Arimoto: まずいろんなことを片っ端から調べます。手に届く範囲で買えるものは買ってみたり、Webで見たり、体験してみたりします。それこそ最近だとChatGPTのディープリサーチも使います。 最初から正解を決めにいくというより、材料や情報をとにかく集めていきます。 調べて、触れて、会話して。その上で方向性を決めて形にしていきます。
どういうユーザやニーズがあって、どういう特徴があって、どういうサービスや製品があるのか。知識が上がった状態で担当者さんと話すと、より深いインサイトなどを引き出しやすいです。
その過程で気づいたら自分もただのユーザーではなくコアなファンになっていることも多いです。ただ、客観視できていないとよくないと思っているので、俯瞰した視点を同時に持ち、目的やオーディエンスを向く必要がある。そのためユーザー視点と、俯瞰で見る視点。その2つを行き来しています。
フィードバックを受け取りながらブランドの本質を見出す
Q. 制作の中で一番やりがいを感じる瞬間はどこですか?
Arimoto: デザインは、出したあとにフィードバックが返ってくるのが大きいと思います。作ったものがコミュニケーションツールとして機能している実感がある。そこが嬉しいです。
単純に楽しいのは、手を動かしている時間です。夜中に「ここをこうしたら違う感じになるんじゃないか」とか、「見たことないものができるんじゃないか」と、ちょっとしたいたずらをしながら試している時が一番楽しい。
複雑なものも好きです。やってる最中は躁鬱みたいになるんですが、最終的に出力が良くなるとやっぱり楽しい。難しい条件の中でもアウトプットを改善していくうちにそれを乗り換えれる瞬間があり、その瞬間が嬉しいです。
AIツールについて
Midjourney × Photoshopで、合意形成と制作のスピードを上げる
Q. AIは普段どのように使っていますか?
Arimoto: かなり使っています。デザイン素材を作ったり、KVのドラフトを作ったり。
背景やプロップをMidjourneyで生成して、Photoshopで製品を当てて、色彩を調整するというのは日常的にやっています。
写真だと思われることもあります。使い続けていくうちに、AIっぽさを消していく方向に寄せられるようになります。調整の仕方が分かってくるというか、違和感を減らしながら自分がイメージしている方向にどんどん近づけていけるようになりますね。使えば使うほど癖が分かってきて手に馴染んでくるのはAdobe系のツールとかと同じだと思います。
AIが当たり前になるほど、求められるのは「判断」と「整え方」
Q. アートディレクション業務においてAIのパフォーマンスはどこにあると思いますか?
Arimoto:現状は、撮影前の認識のすり合わせに非常に向いています。
代理店でも、ムードボードやKVのドラフトはMidjourneyやNano Bananaなどの生成AIで作るのが当たり前に近い。
クライアントがAIでもOKという前提なら、最初の出力をAIで作っていく流れも増えると思います。
海外のクライアントの場合、最近ではAIでも問題ないというケースも増えてきているのも事実です。出力にもAI活用が入ってくる流れは加速していくと思います。大手ブランドのCMでさえも、全部がAIではないけど、要所のシーンでAIっぽさを感じることが増えてきている。そこで差が出るのは、アートディレクターの判断や整え方だと思います。
今後の展望
人の心に残るブランドの本質を正しく表現する
Q. 今後、関わりたいお仕事について教えてください。
Arimoto:上流の部分から落として、手を動かすところまで含めて とにかく一気通貫でやりたいです。
デザイン資産が正しく積み上がり、ブランドがより強固になるような仕事を、もっと増やしていけたらと思っています。
Q. これから企業と一緒に実現していきたいことを、改めて教えてください。
Arimoto: 広告のビジュアルとして成立するには、アテンションエコノミーの中で生き残れることが最低条件だと認識しています。 どれだけ注目を得られるかが初めに来る。その中で、ブランドのカラーを出しつつ、どれだけ人の意識や行動にポジティブな影響を与えられるか。人の意識をちゃんと奪うことができ、それでいていい意味で人の心にずっと残るようなものを、クライアントと一緒に作っていきたいです。
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投稿日:
2026/08/28
JOOiには、肩書きや職域の枠を越えながら、事業の前進にコミットできるデザイナーが在籍しています。
今回ご紹介するのは、ドイツ・ベルリンを拠点にしながら活動する アートディレクターのArimotoさん。
現代美術の世界からキャリアをスタートし、デジタルマーケティング領域を経て、現在はフリーランスとして活動しています。
ブランドやキャンペーンの上流設計から、ビジュアルの制作・調整まで、一気通貫で推進するスタイルが特徴のデザイナーです。
この記事は海外での学びや制作経験、そしてAIを取り入れた実務的なワークフローまでArimotoさんが大切にしている世界観の読み解き方や、制作に集中できる環境のつくり方、AI活用方法などまとめました。
ぜひ最後までご覧ください。
インタビューアー
Arimoto

現代美術の領域からキャリアをスタートし、Webデザインやデジタルマーケティングを経て、現在はフリーランスとしてマーケター兼アートディレクターとして活動。ドイツ(ベルリン)を拠点に、SNS運用の戦略設計からアートディレクション、コピー、撮影ディレクションまで、レイヤーをまたいだ制作経験を持つ。海外での学びとしてマイアミ・アド・スクールにも通い、現在は卒業。
キャリアについて
現代美術からデザインへ。転機になった「世の中への影響」と「ブランドの成長」
Q. キャリアの出発点は現代美術だったとのことですが、当時はどんなことに惹かれていましたか?
Arimoto: 最初は現代美術の業界にいました。新しい表現がどう生まれてくるのかや、アート性のあるものがどのようにして価値が形成されたりされなかったりするのかに興味を持っていました。
その頃からWebデザインも行なっておりPhotoshopなどAdobe系のソフトにも触っていました。フリーランスでWebデザイナーをしながら、海外に行って1年くらい滞在した時期もあります。
Q. そこからデザインへ舵を切った決定打は何だったのでしょう?
Arimoto: 大きかったのは、世の中への影響の仕方が違うことです。美術は長い時間軸の中で評価が形成されたりされなかったりしますが、デザインは、もう少し直接的に需要に対して世間に影響力を与えられる。そこが自分にとっては大きかったです。
もうひとつは、ブランドが成長していく過程を見たい、という気持ちです。 某有名ブランドのように人の心の中に積み上がっていく存在って「美しい」と感じます。自分も、そういう積み上がっていくものづくりに関わりたいと思いました。
経営メンバーやマーケ責任者の意図を汲み取り、クリエイティブに落とし込む役割へ
Q. その後、Webデザインだけでなく、SNS運用の戦略からアートディレクション、コピー、撮影まで関わるまで、なぜそこまで領域が広がっていったんでしょう?
Arimoto: 日本に戻って「会社で働いてみたい」と思ったのと、Webデザインだけじゃなく、もう少し意思決定に関わる上流に携わってみたいという気持ちが強くなっていったのが大きいです。
またとにかく新しい業務に積極的に挑戦するということも同時に意識していました。
そうすることでSNS運用の戦略立てから実制作まで、一気にやる案件が入ってきたりして、スキルと対応範囲の幅が広がっていきました。
Q. Arimotoさんの話を聞いていると、制作だけでなく、それぞれの関係者とコミュニケーション方法が強みになっている印象です。仕事を進める時、どんな構造で業務を整理しているのでしょう?
Arimoto: ブランドの目的や企業としてのPRの方向性、そこからマーケティングの戦略や、もう一段下のキャンペーンの目的などがあり、それぞれに対して因果関係が整理されているデザインかどうかを意識しています。
それぞれの目的達成のために、何をどう表現に落としデザインを作るかを、いろんなレイヤーや視点で考えていく必要があると思っています。
例えば、ブリーフはもちろん毎回丁寧に読み込ませていただくのですが、それをベースに目的や方向性などをディスカッションしていくと、当初想定されていたものとは全く別のものを作る方がいいという結論になるケースは非常によくあります。クライアントと一緒に意見や経験を出し合ってブリーフ自体を作り上げていく、というのが感覚として近いと思います。
実績について
Mercedes-Benz × Gustaf Westman:クライアントの強いこだわりに応え、表現を磨き切るプロセス
Q. Arimotoさんの代表的な実績を教えてください。
Arimoto: メルセデス・ベンツとスウェーデンのデザイナー、グスタフ・ウエストマンとのコラボ案件ですね。
自分がコンセプトをゼロから全部組み立てたというよりは、「どれだけビジュアルに落とし込めるか」「言語的にどう拡張するか」という部分で関わった形です。

まず、キャンペーンコンセプトの設計とムードボード作りの部分から参画しました。最終的にマジカルリアリズムというコンセプトタイトルを付け、現実から抜け出していく非日常感を持たせながらも、シュルレアリスムのように完全な夢の世界まではいかないというようなバランス感を持った接地点を探りました。
撮影は別の方が担当して、撮影後の素材の扱いや、ポストプロダクションで音楽をどうするか、みたいな部分も相談しながら進めています。領域で言うとアートディレクションです。
プロモーションはドイツのインターナショナル向けでした。 伝統あるラグジュアリーブランドとしてビジュアルへのこだわりが非常に強いクライアントでしたので、高級感をキープしながらユニークさで注目を集めるビジュアル強度の実現に膨大な時間をかけました。リサーチの部分では、高級感とユニークさの両立という点でファッション系の広告写真を大いに参考にしました。
ブランドの本質に迫るための仕事術
ユーザー視点と俯瞰した視点を行き来し、ブランドの本質を理解する
Q. ブランドの世界観を読み解く時、最初に何から始めますか?
Arimoto: まずいろんなことを片っ端から調べます。手に届く範囲で買えるものは買ってみたり、Webで見たり、体験してみたりします。それこそ最近だとChatGPTのディープリサーチも使います。 最初から正解を決めにいくというより、材料や情報をとにかく集めていきます。 調べて、触れて、会話して。その上で方向性を決めて形にしていきます。
どういうユーザやニーズがあって、どういう特徴があって、どういうサービスや製品があるのか。知識が上がった状態で担当者さんと話すと、より深いインサイトなどを引き出しやすいです。
その過程で気づいたら自分もただのユーザーではなくコアなファンになっていることも多いです。ただ、客観視できていないとよくないと思っているので、俯瞰した視点を同時に持ち、目的やオーディエンスを向く必要がある。そのためユーザー視点と、俯瞰で見る視点。その2つを行き来しています。
フィードバックを受け取りながらブランドの本質を見出す
Q. 制作の中で一番やりがいを感じる瞬間はどこですか?
Arimoto: デザインは、出したあとにフィードバックが返ってくるのが大きいと思います。作ったものがコミュニケーションツールとして機能している実感がある。そこが嬉しいです。
単純に楽しいのは、手を動かしている時間です。夜中に「ここをこうしたら違う感じになるんじゃないか」とか、「見たことないものができるんじゃないか」と、ちょっとしたいたずらをしながら試している時が一番楽しい。
複雑なものも好きです。やってる最中は躁鬱みたいになるんですが、最終的に出力が良くなるとやっぱり楽しい。難しい条件の中でもアウトプットを改善していくうちにそれを乗り換えれる瞬間があり、その瞬間が嬉しいです。
AIツールについて
Midjourney × Photoshopで、合意形成と制作のスピードを上げる
Q. AIは普段どのように使っていますか?
Arimoto: かなり使っています。デザイン素材を作ったり、KVのドラフトを作ったり。
背景やプロップをMidjourneyで生成して、Photoshopで製品を当てて、色彩を調整するというのは日常的にやっています。
写真だと思われることもあります。使い続けていくうちに、AIっぽさを消していく方向に寄せられるようになります。調整の仕方が分かってくるというか、違和感を減らしながら自分がイメージしている方向にどんどん近づけていけるようになりますね。使えば使うほど癖が分かってきて手に馴染んでくるのはAdobe系のツールとかと同じだと思います。
AIが当たり前になるほど、求められるのは「判断」と「整え方」
Q. アートディレクション業務においてAIのパフォーマンスはどこにあると思いますか?
Arimoto:現状は、撮影前の認識のすり合わせに非常に向いています。
代理店でも、ムードボードやKVのドラフトはMidjourneyやNano Bananaなどの生成AIで作るのが当たり前に近い。
クライアントがAIでもOKという前提なら、最初の出力をAIで作っていく流れも増えると思います。
海外のクライアントの場合、最近ではAIでも問題ないというケースも増えてきているのも事実です。出力にもAI活用が入ってくる流れは加速していくと思います。大手ブランドのCMでさえも、全部がAIではないけど、要所のシーンでAIっぽさを感じることが増えてきている。そこで差が出るのは、アートディレクターの判断や整え方だと思います。
今後の展望
人の心に残るブランドの本質を正しく表現する
Q. 今後、関わりたいお仕事について教えてください。
Arimoto:上流の部分から落として、手を動かすところまで含めて とにかく一気通貫でやりたいです。
デザイン資産が正しく積み上がり、ブランドがより強固になるような仕事を、もっと増やしていけたらと思っています。
Q. これから企業と一緒に実現していきたいことを、改めて教えてください。
Arimoto: 広告のビジュアルとして成立するには、アテンションエコノミーの中で生き残れることが最低条件だと認識しています。 どれだけ注目を得られるかが初めに来る。その中で、ブランドのカラーを出しつつ、どれだけ人の意識や行動にポジティブな影響を与えられるか。人の意識をちゃんと奪うことができ、それでいていい意味で人の心にずっと残るようなものを、クライアントと一緒に作っていきたいです。
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